ただただ人が好きな青年の、人よりも少し長い人生の物語
- ★★★ Excellent!!!
不死の青年、ナユタの軌跡を描いた話です。
怪我などで体がどれだけ酷いことになっても、一度死んでしまえば全て元通りに生き返る青年・ナユタ。作中の世界でも不死というのは当たり前のものではなく、むしろナユタ本人は自分以外に一人しか聞いたことがないと言うほど珍しいもの。
だから当然彼の不死性を目の当たりにした人間は驚き、恐れ、時に彼を利用しようとします。
そんな人生を歩んできたら人間不信にでもなっていそうなものですが、このナユタという人は人間が大好きです。
時には自ら人助けのために、時には他者から強制されるような形で何度も何度も死と再生を繰り返すのですが、それでも彼は人を好きでい続けます。死ぬたびに苦痛は感じているはずなのに、どうしてそこまで?と問いたくなるほど彼は彼のままなのです。
作中ではその理由は明確には語られません。最初から彼は人間が好きで、他人のためにその不死性を使える人です。自分に酷いことをしてきた相手を恨むでもなく、ただあるがままに己の特異性を受け入れているように見えます。
それでも最後まで読んだ時、もしかしたらこういう理由なのかな?と思うものがありました。ネタバレしなければならないので詳細は控えますが、彼の身にそれが降り掛かったからこそ、以前よりも一層人というものが好きになったのではないかと思います。
ただただ人が好きな青年の、人よりも少し長い人生の物語。ゆったりとした読書時間を過ごしたい時におすすめです。