霧晴れ

 遥か彼方の出口が徐々に消えていく。驚いて相手の手を離す。すると、出口は固く閉ざされた。あの手を探しても、もう見つからない。また一人になってしまった。手探りであちこち掴んでも何も無い。

 掴めないものを掴みながら歩いていたら、地面に足を取られて躓いてしまった。膝から赤いものが滲む。目の前も滲んでいく。それでも、立ち上がって歩いた。どこまでも歩いた。痛い。膝も胸も痛かった。視界は足を進める度に更に滲んでいく。それが嗚咽に変わろうと歩いた。霧から抜け出したくて歩いた。

 しばらくした時、またあの時と同じ腕が見えた。悲しくて嬉しくて悔しくてつらくて。縋るように手を伸ばす。すると相手はさっきより強く手を握ってくれた。まるで大丈夫だと言わんばかりに。

 その時、一陣の風が吹き抜けた。すると、さっきまであんなに深かった霧が一瞬で晴れた。ここは森の中。目の前にいる人は笑顔で言った。

「やっと逢えたね。」

 私は泣きながらも笑顔で頷いた。

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鈴音 @suzune_arashi

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