(前半)匿名希望さんからのテキストファイル【3】.txt
匿名希望さんからのテキストファイル【3】
***
このメモでは、私の受けたパワハラについて書いていきます。
夫の転勤の影響を受けるのは、娘たちだけでなく当然私もそうでして。
元々仕事をしており、今回はその転勤先に、たまたま会社の本社があったのです。
なので、そのまま私も転勤のような形で、本社へ移動することになりました。
所属も本社に換わったので、ある意味栄転というやつなのかもしれません。
目に見えて待遇が良くなったわけではありませんでしたが、子持ちの方が以前よりも増えたので、色々と話せる人が増えたのは嬉しかったですね。
しばらくは、順調に仕事をしていました。
それまで次女のこと、長女のことで悩むことも多く、疲れていたんです。
知らない土地へ来たということもしかり、同じ会社と言えど、勤務地が異なっているから勝手が変わったこともしかり。
そこへ、新しい上司がやってきました。
詳しい年齢は聞いていませんが、おそらく五十代くらいの男性で、ここではAさんとしておきます。
Aさんも私と同じように、支社から本社へ異動してきたと言っていました。
そうなんだ、くらいにしかそのときは思っていませんでしたが、強いて言えば「変な時期に異動してきたな」という点ですかね、気になったのは。
新年度とか、まぁ年明けとか、期の変わり目とかだったら納得なんですけど、そういうわけじゃありませんでしたから。
「そうこともあるんだな」程度の気持ちでした。
皆さん同僚はもうベテランって感じで、何でも教えてもらっていたんですね。
ちょっと珍しいこととかは、説明会なんかも開いてもらって。
そのAさんが来てから、それが増えました。
Aさんにも知ってもらいたいから……だと思っていますけど。
ただその、席が自動的に、私とAさんで隣同士になりまして。
説明会の時ですね。
私たちが一番前の席で、講師の方って感じで白板のところに何人か、聞きたい人は良かったらどうぞのスタンスで、希望者が私たちの後ろの席にチラホラと。
最初は真面目? に聞いていたのですが、段々とAさんが話しかけてくるようになって。
私は説明会でしっかりと話を聞いておきたいので、邪魔にならない程度に適当に返していたんです。
そうしたら、それが気に入らなかったのか態度がこう、横暴になって来まして。
うわぁ、とは思ったんですが、年上だし立場的には上司だしで、強くは言えなかったんです。
我慢してたんですけど、何かにつけて就業中席に呼び出したり、帰ろうとすると引き留めてきたり。
周りの人も「これはおかしいぞ?」と思い始めたみたいで、やんわりこっちへ来るのをブロックしてくれたり、自ら話しかけてこっちに話しかけないようにしてくれて。
これは、直接聞きました。
「大丈夫? 何か嫌なことない?」って言われて、Aさんの話をしたんです。
「私たちも気になったから、勝手だけどそうやって様子を見させてもらった。ハッキリ言うことができなくて申し訳ない」って。
そのお陰で、Aさんから私に対する嫌な絡みは激減しました。
と思ったんですよ。
思ったんですけど、間違いでした。
それだけだったら、神様にも祈らなかったんですけどね。
私も細かい仕事を任されるようになって、そうすると、そのAさんからも仕事が回ってきたんですよね。
でも、必ずダメ出しが入るんです。
それ自体は良いんですよ。
間違っていたら指摘してもらいたいし、最善の方法があれば教えてもらいたいですし。
なのに、Aさんから言われるのは「これだから子持ちの女は」とか「スカートなんか穿いて男を誘ってるんだろ」みたいな、セクハラじみた仕事には全然関係ない内容だったんですよね。
反論するんですけど、決まって「上司に逆らうのか」「俺が言えばお前なんかすぐに辞めさせられるんだぞ」みたいな、脅迫にもなりそうなことを返されるんです。
同じことでも違うことでも、一日に何回も繰り返されるんです。
そりゃ、こちらとしてはまだ職を失いたくありませんし、上司なのは確かに上司なので穏便には済ませたいし、仕方なくはいはい聞きながら堪えていました。
ところがどうやら最初の時に、私が強く言い過ぎたみたいで。
ある日私の作っていた資料、シュレッダーにかけられちゃったんですよね、Aさんに。
資料がないことに気が付いて、みんなに聞いても誰も行方を知らなくて。
Aさんが「あー、もしかしてあの子どもが作ったみたいな資料か? あれなら失敗作だと思ってシュレッダーにかけといたぞ。ごみ処分してやったんだから、ありがたく思えよ?」って言ったんです。
お客様に見せる資料だったので、他の人も一緒にAさん問い詰めましたよね。
そもそも、私の机の引き出しの中にあったものを、本人の了承も得ず勝手に取り出した挙句、何も言われていないのに自分の判断でシュレッダーにかけたんですから。
流石に堪えたのか評価に関わると思ったのか、表面だけの謝罪を受けましたが、反省はしていなかったみたいで「俺に逆らうとこうなるんだ」みたいなことを、私の後ろを通る時にブツブツ言っていました。
ただのヤバいやつですよね、でも、上司という気持ちがあって、黙っていた結果がセクハラじみたパワハラの開始です。
次の更新予定
2025年12月9日 20:00 毎週 火曜日 20:00
わたしだけのかみさま-宗像祈の配信録- 三嶋トウカ @shima4ma
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。わたしだけのかみさま-宗像祈の配信録-の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます