灰色の愛は誰のために

黒薔薇

　君のことをずっとずっとずっとずっと見てきた。

　君がいるだけで嬉しくて。ルンルンと、小躍りしたくなって。

　愛してる。

　そう、僕は君のことを愛してるんだ。

　好きで好きで好きで好きでたまらなくて。

　君のためならなんだってできるんだ。

　君の願いはなんだって聞く。

　君のためになると思ったらなんだってする。

　君の目の前にある障害は全部取り除く。

　君が宝くじで一等を当てろと言うのであれば当たるまで買おう。

　君が欲しいと言ったものがあるのならばそれを与えよう。

　君のためにすることで僕にできないことはない。

　だって、君がいるだけで世界はキラキラ輝いて、色づいて見えるんだもの。

　君のためなら本当になんでもするんだ、だから。

　だから僕を選んで。

　選んでくれなかったら狂ってしまいそう。

　君が僕を選ばないだなんてそんな未来は受け付けない。

　君が君が君が君が君が君が君が君が君が、全部全部全部全部全部願ったことなんだ。

　君が重い人の方がいいと言って、僕は重くなって。

　君が所作が綺麗な人がいいと言って、僕は努力して。

　君が金持ちな人がいいと言って、僕はお金を稼いで。

　君が顔がいい人がいいと言って、僕は顔を変えて。

　君が料理ができる人がいいと言って、僕はシェフになって。

　君が和菓子を作れる人がいいと言って、僕は和菓子の修行をして。

　君が掃除のできる人がいいと言って、僕はあらゆる掃除のしかたを勉強して。

　君が、全部君が願ったことなんだ。僕は全部叶えたんだ。

　それでも君が僕を選ばないのはなんで？

　なんで僕を選ばないの？

　なんで、なんで、なんで？

　全部君が願ったことじゃないか全部君が願ったから僕は努力して叶えたんじゃないかなんで今更拒否するのさ全部君のためなんだよ？

　どうして拒絶するの？

　全部、君が言ったことだよ？

　なんで？

　なんで？

　なんで？

　全部、君が願ったことだよ？

　君が願ったから僕は叶えた。

　君のために僕は動いたんだ。

　なんで君は僕の努力を否定するの？

　最初に僕を褒めたのは君だよ？

　僕に好きだよって言ったのも君だよ？

　どうして今更捨てようとするの？

　なんで？

　ねぇ、なんで？

　あれ、なんで君が床に横たわってるのかな。

　床が真っ赤だ、掃除しないと。

　君は綺麗好きだもんね。染みが残ったら大変だね。

　また、拒絶なんてされたくないからね。

　この汚れを綺麗にしたら、喜んでくれるかな。

　また笑顔を見せてくれるのかな。

　えへへ、楽しみだなぁ。

　そうだ、君が起きたときのために君の好きな和菓子を用意しよう！

　そしたらきっと喜んでくれるよね。うん。

　名案だ。さすがは僕。てんっさいだね。ふふふ。

　それにしたって不思議だな。

　君がいるのに、世界が灰色になっちゃった。

　君が目を開けたら、また色が付くのかな？

　じゃあ、そのときのために掃除をして、和菓子を作らないとね。

　また、君は起きる。そうだよね？約束したもんね。

　君は僕よりも生きるって、言ったもんね。だから君はまた起きる。

　君は約束を破らないもんね。