泣きっ面にケーキを

@03223

第1話「息子には障害が」

ある薄暗い夏の夕暮れ、私は仕事から帰り山近の我が家でもある団地に向かっていました。すると………

「ピロロン♪」

スマホの着信音が鳴り、画面を見てみると

「急いで家に帰ってきて!」

と6歳の息子の裕太からメッセージが送られてきました。何事かと思い、スマホのカレンダー機能を開くと今日は裕太の誕生日でした。

「そうかあいつ今日誕生日なのか」

と思い、すっかり忘れていた私は逆方向におもちゃ屋とケーキ屋あるのを思い出し急いで向かい、チョコケーキと恐竜のおもちゃを買って急ぎ足で家に向かいます。

錆びた鉄の扉はギイっと不気味な音を立てて開かれる。

「とっちゃん!お帰り!!」

裕太は目を閉じながら私に抱きついてくる。

裕太は味覚障害と視覚障害を患っており目は少しだけ見えるのだが味覚は一切なくなっており最初聞いたときは私には身が重いと思っていたが今は立派な私の息子です。

すると後ろの扉からカワイイぬいぐるみを持って駆け寄ってくる女の子がいます。娘の可憐です。

「うい2人ともケーキ買ってきたぞ〜!!」

二人は目を見開いて高く飛び上がります。

「わーい!!やったやったケーキだ!!」

と言いながら俺は机にケーキを乗せます。

俺は四等分に切り息子と娘の目の前に置きます。

「アンタそんな高いケーキどこで買ったの?」

と嫁のキヨリが私の頭を叩きます。キヨリはコップにジュースを注ぎ息子と娘に渡します。すると部屋の電気を消してろうそくに火をつけます。

「ハッピバースデートゥーユー♪ハッピバースデートゥーユー♪ハッピバースデーディア

ゆーたー♪ハッピバースデートゥーユー♪」

と楽しげに歌いながら裕太は目の前にある小さなろうそくの火をフッと吹きかけます。

「はい裕太お誕生日プレゼント」

と私は裕太に恐竜のおもちゃを渡します。

「わー!ありがとう!とっちゃん!!」

息子は限りある少ない視界でおもちゃをジロジロ見ています。相当気に入ったんだろうなと思い

「今日は夜も遅いしケーキ食べたら寝ようか!」

と嫁のキヨリは子供たちに声をかけるが

「えー!!やだやだとっちゃんと一緒に遊びたいー!」

と駄々をこね始めます。キヨリはため息をつき

「じゃあ今日だけね」

と息子に言います。私は裕太とこれでもかと言うほど沢山遊びました。私は遊びながら思ったんです。

『何で味覚がないのに裕太はケーキを美味しそうに食べていたのだろう』

そう考えると少しだけ不気味な気分になりましたが裕太の笑顔をみるとそんなこともすっかり忘れてしまいました。午後の11時

「……スヤスヤと気持ちよさそうに寝るわね」私はその夜疲れがどっとでたのか私もすぐに寝てしまいました。深夜の四時くらいでしょうか私は急な尿意に起きてしまいトイレに向かいました。すると……

「ぼりっぼりっばきょっばきょっ」

何かを捕食するかのような音が聞こえました。私はこっそりキッチンの方をのぞき込みました。

「は?」

そこにはネズミや猫の死骸のような物に喰らいついている『裕太』の姿がありました。

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