【速報】鹿児島市で150年前の仏像を発見 廃仏毀釈の"生き証人"か

 2025年6月15日 18:30 NHK鹿児島『情報WAVE 鹿児島』


 鹿児島市桐ヶ谷地区の宅地開発現場で15日午前、土の中から木箱に入った仏像が発見されました。専門家は明治初期の廃仏毀釈の際に隠されたものとみており、当時の信仰の実態を示す貴重な史料として注目されています。



【第一報】工事現場で木箱発見


 午前10時35分頃、鹿児島市桐ヶ谷3丁目の住宅建設予定地で、ショベルカーによる掘削作業中に作業員が「固い物に当たった」と作業を中断。


 掘り起こしたところ、腐食した木箱(縦約80cm、横約40cm、深さ約30cm)を発見しました。


「最初は古い生活用品かと思いました。でも開けてみて、これはただ事じゃないと」

 作業員の田中和也さん(42)は当時の様子をこう振り返ります。


 ---


【詳細】観音菩薩像、ほぼ完全な状態で


 木箱の中には布で何重にも包まれた観音菩薩像(高さ約60cm、推定重量5.0kg)が収められていました。


【鹿児島大学・歴史学部の山下教授のコメント】


「驚くべきことに、150年以上土の中にあったとは思えないほど保存状態が良好です。木箱と布による二重の保護、そして桐ヶ谷の土壌が偶然にも湿度と温度が安定していたことが幸いしたのでしょう。

 特筆すべきは、この地域にあった蔵照寺という寺の記録に『小さな観音像』の記述があることです。明治2年(1869年)の廃仏毀釈で寺は取り壊されましたが、この像は記録から消えていました」


 ---


【背景】薩摩藩の徹底的な廃仏毀釈


 明治政府は1868年、神仏分離令を発令。これを機に全国で仏教施設の破壊運動「廃仏毀釈」が広がりました。


 特に薩摩藩では極めて徹底的で、わずか数年で:

 ・寺院数:1,600以上→ゼロ

 ・僧侶:2,900人以上→全員還俗


 という記録が残っています。


「薩摩の廃仏毀釈は全国でも例を見ないほど完璧でした。だからこそ、こうして当時の仏像が『隠されて』残っていたという事実は、歴史学的に極めて重要です」(山下教授)


 ---


【証言】「曽祖父が守った観音さま」


 発見のニュースを聞きつけ、夕方、一人の高齢男性が現場を訪れました。


 桐ヶ谷在住の農業・弥助良平さん(82)。


「曽祖父の弥助が、この辺りに畑を持っておりました。幼い頃、祖父から『観音さまを土に返した』という話を聞いたことがあります。まさか本当に出てくるとは……」


 弥助さんは観音像の前で静かに手を合わせ、涙を流しました。


「よう、戻ってきなさった」


 その言葉は、150年前の弥助から、令和の弥助への、時を超えたメッセージのようでした。


 ---


【現場リポート】住民たちの祈り


 午後3時、現場には簡易の祭壇が設けられました。

 近隣住民約50名が次々と訪れ、観音像に手を合わせています。


 インタビュー:


 会社員・佐藤美咲さん(28):

「私、特に信仰とかないんですけど……なんか、すごく大切なものを見てる気がして。150年前の人が、命がけで守ったものなんだなって」


 主婦・田中春子さん(65):

「この観音さまを土に埋めた人は、どんな気持ちだったんでしょうね。『いつか』を信じて埋めたんでしょうね。その『いつか』が今日なんだと思うと……」


 高校生・山田太郎くん(17):

「歴史の教科書で廃仏毀釈って習ったけど、実物を見るとマジでヤバいっすね。リアルタイムカプセルじゃないですか」


 ---


【専門家の見解】"抵抗の証"


 東京大学・日本宗教史研究室の吉田准教授(リモート取材):


「薩摩の廃仏毀釈は『抵抗ゼロ』と記録されてきました。しかしこの発見は、表に出なかった『静かな抵抗』があったことを示しています。


 檀家と僧侶が秘密裏に仏像を隠すという行為は、命がけです。発覚すれば処罰は免れません。それでも彼らは『未来への希望』を選んだ。


 この観音像は単なる文化財ではなく、『希望を手放さなかった人々の証』なのです」


 ---


【今後】市指定文化財へ、特別展示も検討


 鹿児島市教育委員会は16日、専門家による調査委員会を設置すると発表。

 観音像の年代測定、材質分析を行い、市指定有形文化財への登録を目指します。

 また、鹿児島県歴史資料センター黎明館では、今秋の特別展「薩摩の廃仏毀釈と信仰」での展示を検討中とのことです。


 市教育委員会・文化財課の担当者:

「この観音像を通じて、若い世代にも歴史の重みと、人々の思いの強さを感じてもらえればと思います」


 ---


【SNSの反応】


 X(旧Twitter)では「#桐ヶ谷の観音さま」がトレンド入り。


 > 「150年越しのタイムカプセルエモすぎる」

 > 「子孫キターーーーー!」

 > 「これ映画化してほしい」

 > 「歴史の教科書、もっとこういう話載せてくれ」


 ---


【関連情報】


 過去の類似事例:

 ・2018年:岐阜県中津川市(旧苗木藩)で廃仏毀釈期の仏像発見

 ・2012年:富山県で寺の床下から隠された経典発見


【蔵照寺について:】

 ・創建:江戸時代初期(推定1620年頃)

 ・明治2年(1869年)廃寺

 ・本尊:阿弥陀如来(破壊、現存せず)

 ・檀家数:約40軒(記録より)


 ---


【取材後記】


 取材中、最も印象的だったのは、老若男女問わず、観音像の前で自然と手を合わせる人々の姿でした。

 宗教的な信仰というより、「時を超えた人間の思い」に対する敬意のように感じられました。

 150年前の夜、月明かりもない暗闇の中で、震える手で土を掘った人がいた。

「いつか」を信じて、希望を埋めた人がいた。

 その「いつか」が、今日だったのです。


(鹿児島放送局・記者 中村健太郎)


 ---


【速報・18:45追記】


 桐ヶ谷地区自治会は、来月21日に「観音さま帰還記念式典」の開催を決定。

 弥助良平さんを招待し、地域の歴史を振り返るイベントを行う予定です。


 ---


【この記事に関する情報提供】

 NHK鹿児島放送局

 TEL: 099-XXX-XXXX

 メール: kagoshima@nhk.or.jp


 【動画】

 現場の様子や弥助さんのインタビューは、NHKプラスで配信中


 【写真特集】

「土の中から現れた観音さま」全12枚

 https://www3.nhk.or.jp/kagoshima/photo/20250615/


 ---


 この記事は2025年6月15日 18:30時点の情報です

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

歴史の静寂 ~百五十年目の微笑~ 須藤 @blendyz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ