『俺達のグレートなキャンプ141 恋愛ドラマ風に炊飯器の取扱説明書を音読』

海山純平

第141話 恋愛ドラマ風に炊飯器の取扱説明書を音読

俺達のグレートなキャンプ141 恋愛ドラマ風に炊飯器の取扱説明書を音読


夕暮れ時の富士五湖のキャンプ場。オレンジ色の柔らかな光が湖面を照らし、キャンプサイトには心地よい涼風が吹き抜けている。テントが立ち並ぶ中、石川たちのサイトだけが異様な雰囲気を醸し出していた。

「よーし!今日のグレートなキャンプ企画、発表するぞー!」

石川が両手を高々と掲げ、満面の笑みで叫ぶ。その瞳はキラキラと輝き、まるで子供が遠足の前日にはしゃいでいるかのようだ。焚き火の前に立つその姿は、完全に舞台役者のそれである。

千葉は期待に目を輝かせながら、手を膝の上で組んで前のめりになる。「おおっ!今日は何ですか石川さん!」その声は弾んでおり、頬が興奮で紅潮している。

富山は焚き火の横で腕を組み、深いため息をつく。その表情には諦めと不安が入り混じっている。「はぁ...また始まった...今回は何なの...」目を細めて警戒の色を隠さない。肩が疲れたように下がっている。

「じゃじゃーん!」石川がリュックから取り出したのは、なんと炊飯器の取扱説明書。表紙には「象印マイコン炊飯ジャー NS-WF10型」と書かれている。ページは使い込まれて少し黄ばんでおり、角が折れている。その説明書を、まるで宝物のように両手で掲げる。

「......は?」富山の声が裏返る。眉間に深い皺が刻まれ、口がぽかんと開いている。首を何度も左右に振って、現実を受け入れようとしている。

「これを!」石川は説明書を胸に抱き、目を潤ませながら続ける。「恋愛ドラマ風に!情熱的に!魂を込めて!音読するのだー!」その声は感動で震えており、本気で感極まっている様子だ。

シーンとした沈黙。湖からの風だけが、サイトの間を通り抜ける音が聞こえる。

隣のサイトでバーベキューの準備をしていた若いカップルが、こちらをチラリと見る。その視線には明らかな困惑が含まれている。女性が男性の袖を引いて、小声で何か囁いている。

「え...えっと...」富山が額に手を当て、目をぎゅっと閉じる。深呼吸を三回繰り返す。「炊飯器の...取扱説明書を...恋愛ドラマ...風に...?」一言一言を確認するように、震える声で繰り返す。その顔は完全に引きつっている。

「そう!昨日テレビで韓流ドラマ見てたらさ、思ったんだよ!」石川の両手がぶんぶんと宙を切る。「あの情熱的なセリフ回し、あの切ない表情、あの劇的な演出!あれで炊飯器の説明書読んだら絶対面白いって!いや、面白いだけじゃない!感動する!泣ける!」その勢いは止まらない。目は完全に本気で、口角が上がりっぱなしだ。

千葉が立ち上がり、拳を握りしめる。「最高じゃないですか!『保温ボタンを押してください』とか超ドラマチックに言うんですね!」目は完全に輝いており、頬が興奮で紅潮している。両足でその場で小刻みにジャンプしている。

「分かってくれるか千葉!そうだよ!」石川が千葉の肩をガシッと掴み、二人で抱き合って喜ぶ。まるで優勝を決めたスポーツ選手のように、その場でぐるぐると回転する。

富山は天を仰ぐ。「何でこんなことになるの...普通にキャンプしようよ...焚き火眺めてコーヒー飲んで...静かに...」その声は虚空に消えていく。両手で顔を覆い、肩を落とす。指の隙間から、諦めの表情が見える。

「富山ー!一緒にやろうよー!絶対盛り上がるって!つーかさ、お前のナレーション力が必要なんだよ!」石川が富山の両肩を掴んで揺さぶる。その動きは激しく、富山の体が前後に大きく揺れる。

「盛り上がらないよ!っていうか周りに迷惑だよ!私、帰る!帰ります!」富山が必死の形相で抵抗する。しかしその目には、すでに諦めの色が滲み始めている。

「大丈夫大丈夫!キャンプは自由だから!それに俺たちには『奇抜でグレートなキャンプ』っていう使命があるんだよ!」

「使命じゃないの!あんたの趣味なの!」

そんなやり取りをしている間に、千葉はすでに説明書を手に取り、ページをパラパラとめくっていた。その目は真剣そのもので、一字一句を確認している。「へぇ〜、『安全上のご注意』とか『各部のなまえ』とか、これ全部ドラマ風にするんですか?感情の込め方とか、間の取り方とか、考えるだけでワクワクしますね!」

「もちろん!最初から最後まで!全64ページ!完全版だ!」石川が親指を立てる。その笑顔は太陽のように眩しい。歯を見せて、満面の笑みだ。

「64ページ!?」富山の悲鳴が湖に響く。近くにいた釣り人がびくっと竿を揺らし、魚を逃してしまう。釣り人が「あっ!」と声を上げるが、石川たちは気づいていない。

「じゃあ早速始めよう!まずは配役決めから!」石川がパンパンと手を叩く。その音が乾いた音としてキャンプ場に響く。

「配役って...」富山が恐る恐る聞く。もはや止められないことを悟り、最小限のダメージで済ませようとする防衛本能が働いている。その表情は完全に観念している。

「俺が主人公の純愛系男子!千葉がヒロイン役!富山が主人公の親友でナレーション係!完璧な布陣だ!」石川が勝ち誇ったように宣言する。

「なんで私がナレーション...っていうか千葉がヒロイン!?男なのに!?」富山が目を見開く。その目は完全に理解を超えている。

千葉は恥ずかしそうに頬を掻く。「ヒロインですか...頑張ります...」しかしその口元には、微かな笑みが浮かんでいる。やる気は十分だ。既に女性的な仕草を練習し始めており、髪を耳にかける動作をしている。

「性別なんて関係ないよ!大事なのは心だ!心!」石川が胸を叩く。

「そういう問題じゃ...あああもういい!好きにして!」富山が両手を上げて降参する。

気づけば、隣のサイトの若いカップルだけでなく、周囲の複数のサイトから人々がこちらを見ている。興味津々といった表情だ。年配の夫婦、家族連れ、若い男性グループ。総勢10人ほどが、遠巻きに様子を伺っている。

「よーし!じゃあ始めるぞ!シチュエーションは...そうだな...雨の日の告白シーン!場所は学校の昇降口!放課後!」石川が焚き火の前に立ち、炊飯器の説明書を開く。その手つきは、まるで古い恋文を開くかのように丁寧だ。指先が震えている。

千葉が数メートル離れた場所に立つ。傘を持つ仕草をし、濡れた髪を払う演技をする。「雨...やまないわね...」つぶやくように言う。その声は、完全に女性のトーンだ。

富山は焚き火の横に座り込み、顔を両手で覆う。「もう知らない...見てるだけだから...」しかし指の隙間から、しっかりと二人を見ている。

観客たちがざわつく。「何が始まるんだ?」「炊飯器の説明書って言ってたけど...」小声で会話が交わされる。

石川が深呼吸をする。胸に手を当て、目を閉じる。五秒ほどの沈黙。そして目を開け、千葉を見つめる。その目には、本物の恋をしているかのような輝きがある。

「千葉さん...」石川の声が、いつもと違う。低く、感情がこもっている。まるで別人のようだ。

「何...?石川くん...」千葉が振り返る。その動きはゆっくりで、髪が風に揺れる演技も入れる。目を伏せ、恥ずかしそうに頬を染める演技。完璧だ。

「君に...伝えたいことがあるんだ...ずっと...ずっと言えなかったことが...」石川が一歩、千葉に近づく。その足取りは重く、躊躇いが表現されている。靴が地面を擦る音まで聞こえる。

観客たちが息を呑む。完全に見入っている。若いカップルの女性が、彼氏の腕を掴んでいる。

「言えなかったこと...?」千葉の声が震える。その震えは演技なのか本物なのか分からない。唇が小刻みに震えている。

石川が説明書をゆっくりと開く。その動作は、まるで自分の心を開くかのように慎重だ。ページをめくる音が、静寂の中で響く。パラ、パラ、という乾いた音。観客全員が、その音を聞いている。

「この炊飯器には...」石川が一歩、さらに近づく。「『マイコン炊飯ジャー NS-WF10型』という名前があるんだ...」その声には情熱がこもり、まるで恋人の名前を呼ぶかのようだ。目が潤んでいる。本気で感情移入している。

「えっ...」千葉が両手を胸の前で組む。その仕草は完全に恋するヒロインだ。「そんな...素敵な名前...」

観客の一人が「おお...」と小さく声を漏らす。

「定格電圧は...」石川の声がさらに震える。両手で説明書を握りしめ、その手が小刻みに震えている。「AC100V...定格周波数は...50/60Hz...」一言一言に重みを込める。まるでプロポーズの言葉のように。

「そんな...そんなスペックだったなんて...!」千葉が目を見開く。涙が光る。本当に泣いている。その涙が頬を伝う。

富山が思わず顔を上げる。「え...千葉、本気で泣いてる...?」驚きと困惑が入り混じった表情だ。

隣のサイトのカップルが完全にこちらに移動してきている。男性の手に持たれたトングが宙で止まったまま、焼き肉が真っ黒になっていることにも気づいていない。女性は目を潤ませており、男性の腕にしがみついている。「すごい...本物のドラマみたい...」と囁く。

石川が千葉の手を取る。その手は温かく、震えている。「千葉さん...いや、千葉...」名前の呼び方を変える。距離が縮まったことを表現している。「君に知ってほしいんだ...この炊飯器の...すべてを...」

千葉が顔を上げる。その目は涙でキラキラと輝いている。「すべて...?」

「ああ...」石川が説明書の次のページを開く。その動作はゆっくりで、まるで大切な秘密を明かすかのようだ。「『安全上のご注意』...これが...一番大切なことなんだ...」

観客たちがさらに集まってくる。気づけば20人以上になっている。家族連れの子供たちまで、じっと二人を見つめている。母親が「静かにしなさい」と囁く。

「安全上の...ご注意...」千葉が繰り返す。

石川が深呼吸をする。そして、魂を込めて読み上げる。「『警告:電源プラグを濡れた手で触らないでください』...」その声は切実だ。まるで命がけで伝えているかのようだ。

千葉が石川の手を見る。「私の手...濡れていたら...」その声は消え入りそうだ。

「ダメだ!」石川が千葉の両手を包み込む。「『感電や火災の原因になります』んだ!君を...君を危険にさらすわけには...絶対にいかない...!」その声は絞り出すように、震えている。目からは本物の涙が流れている。

観客の中から、すすり泣きが聞こえる。年配の女性がハンカチで目頭を押さえている。「切ない...」という声。

千葉が俯く。その肩が震えている。「でも...私なんて...ただの...ただの新人キャンパーなのに...」その声は自己卑下に満ちている。

「そんなことない!」石川が叫ぶ。その声は夕暮れのキャンプ場に響く。湖のカモメたちが一斉に飛び立つ。「君は...君は素晴らしい!『どんなキャンプも一緒にやれば楽しくなる』って...そう言ってくれたじゃないか!」

千葉が顔を上げる。その目は真っ赤だ。「覚えて...いてくれたの...」

「当たり前だ!」石川が説明書を高く掲げる。「だから...だから君に伝えたい!この炊飯器の...いや、僕の気持ちを!」

観客たちが完全に物語に引き込まれている。若いカップルの女性は涙を流しており、男性も目を潤ませている。家族連れの父親は子供を膝に乗せたまま、動けなくなっている。

石川が説明書の次のページを開く。「『各部のなまえ』...」その声は優しい。「内ぶた...蒸気口...つゆ受け...これらすべてに...意味がある...役割がある...」

千葉が一歩近づく。「役割...」

「そう...」石川が千葉の目を見つめる。二人の距離は30センチほど。「『内釜洗米OK』...この機能を知った時...僕は思ったんだ...」

「何を...?」千葉の声は囁きだ。

「君との出会いも...運命だったんだって...」石川の手が震える。「便利な機能も...安全装置も...すべては...使う人のためにある...僕も...君のために...何かできることがあるんじゃないかって...」

千葉の涙が止まらない。頬を伝い、顎から滴り落ちる。「石川くん...」

富山が完全に見入っている。「やば...何これ...普通に感動してる私...」その目も潤んでいる。ナレーションの役割を完全に忘れている。

観客の一人が小声で言う。「これ...炊飯器の説明書なんだよな...?」

「分からなくなってきた...」別の人が答える。

石川が説明書をゆっくりと閉じる。そして、両手で千葉の手を包む。「千葉...僕は...」

「石川くん...」

二人の顔が近づく。夕陽が二人を照らし、シルエットが美しい。風が吹き、二人の髪が揺れる。完璧なタイミング。

「君のことが...」石川の声が震える。「君のことが...」

観客全員が息を呑む。誰も動かない。時が止まったようだ。

「好きだ!」

石川の告白が、キャンプ場全体に響く。

千葉が目を見開く。その目から、さらに大粒の涙が零れる。「石川くん...私も...私も...!」

「千葉!」

「石川くん!」

二人が抱き合う。石川が千葉を持ち上げ、その場でゆっくりと回転する。夕陽がより強く二人を照らし、まるで祝福しているかのようだ。

観客たちが総立ちで拍手する。「ブラボー!」「素晴らしい!」「感動した!」歓声と拍手が入り混じる。若いカップルの女性は号泣しており、彼氏に抱きついている。「私たちの出会いを思い出しちゃった...」とすすり泣く。彼氏も目を真っ赤にして「俺も...」と答える。

年配の女性は両手で口を覆い、涙が止まらない。「素敵...若いっていいわね...」夫がハンカチを渡す。「あなた、泣きすぎだよ」と苦笑いするが、その目も赤い。

家族連れの娘が父親に聞く。「パパ、あれ本当に炊飯器のお話なの?」

父親が困った顔で答える。「そう...なんだけど...パパもよく分からなくなってきた...」その声は感動で震えている。

小学生の男の子が目をキラキラさせて叫ぶ。「かっこいい!僕も大きくなったらあんな告白する!」

母親が慌てて口を塞ぐ。「ちょっと静かに...でも...確かに素敵ね...」と母親自身も涙ぐんでいる。

富山がようやく我に返る。「はっ!何見入ってんの私!」慌てて立ち上がる。しかし目元を拭う。「くっ...何で泣いてんの...炊飯器なのに...」その声は震えている。

石川と千葉が抱き合ったまま、ゆっくりと離れる。二人の顔は涙と笑顔でぐちゃぐちゃだ。

「やった...成功だ...!」石川が拳を握る。

「石川さん...私、本当に感動しました...」千葉が鼻をすする。その目は真っ赤だが、幸せそうだ。

観客たちの拍手が鳴り止まない。口笛も飛ぶ。「アンコール!」「続きを!」という声が上がる。

「まだ続きがあるの!?」富山が驚く。

「当たり前じゃん!これから『炊飯のしかた』に入るんだよ!二人の絆が深まるシーンだ!」石川が意気揚々と宣言する。

観客たちがどよめく。「まだあるのか!」「見たい!」「絶対見たい!」

若いカップルが前に出る。「あの、僕たちのチェアとテーブル、使ってください!より舞台っぽくなります!」男性が興奮して提案する。

「マジで!?ありがとう!」石川が喜ぶ。

あっという間に、即席の舞台が作られる。キャンパーたちが協力して、チェアやテーブルを配置し、焚き火を中心に半円形の観客席ができあがる。ランタンも増設され、照明も完璧だ。

「じゃあ次のシーン!告白が成功して、二人が初めて一緒に料理をする場面だ!」石川が説明書を開く。

富山が渋々立ち上がる。「もう...付き合うしかないか...」深呼吸をして、ナレーションの姿勢を作る。「それから一週間後...二人は初めて一緒にキッチンに立っていた...」その声は、プロのナレーターのように深く、響く。

観客たちが「おおお」と感嘆の声を上げる。

石川と千葉が、テーブルを挟んで向かい合う。二人の間には、まるで本物の内釜があるかのように、空間を見つめる。

「緊張するね...」千葉が恥ずかしそうに笑う。その仕草は完全に恋人同士のそれだ。

「大丈夫...一緒にやれば...」石川が優しく微笑む。「まず『お米は正しくはかりましょう』...」説明書を読み上げながら、丁寧にカップで米を測る仕草をする。その手つきは慎重で、まるで大切な宝物を扱うかのようだ。

「一合...二合...」千葉が数える。その声は真剣だ。

「そう...丁寧に...」石川が千葉の手に自分の手を重ねる。「『お米を洗いましょう』...優しく...力を入れすぎないように...」

二人の手が重なったまま、円を描くように動く。その動きは美しく、まるでダンスのようだ。観客たちが息を呑む。

「優しく...ね...」千葉が囁く。

「ああ...米も生きているんだ...壊さないように...」石川の声も囁きだ。

年配の女性が隣の夫に囁く。「あなた、米研ぐ時、あんなに優しくしてる?」

夫が冷や汗を流す。「い、今度からそうするよ...」

富山がナレーションを入れる。「二人の手が触れ合う...それは偶然ではなく...必然だった...」その声には、不思議な説得力がある。もう完全に物語の世界に入り込んでいる。

「次は水を入れる...」石川が説明書を確認する。「『水は目盛に合わせて入れましょう』...これが...一番大切なんだ...」

「目盛に...?」千葉が不安そうに聞く。

「そう...」石川が千葉の目を見つめる。「多すぎても...少なすぎてもダメなんだ...これは...愛と同じなんだよ...」

「愛...と同じ...」千葉が目を潤ませる。

「適切な量...適切な距離...それが...二人の関係を良好に保つんだ...」石川の手が千葉の頬に触れる。「分かるかい...?」

「分かる...分かるわ...!」千葉が石川の手を握る。

観客の若い女性が号泣する。「深い...深すぎる...!」彼氏の服を掴んで震えている。

小学生の男の子が真剣な顔で見ている。「水加減って大事なんだ...」その目は真剣そのものだ。将来、料理上手になりそうな予感がする。

石川が説明書の次のページを開く。その動作は劇的で、風が吹いてページがはためく。「そして...運命の瞬間が来る...」

「運命の...瞬間...」千葉が固唾を呑む。

富山がナレーションを入れる。完全に物語に没入している。「二人は...選択を迫られる...」その声は低く、緊張感に満ちている。「このボタンを押せば...もう後戻りはできない...」

観客たちも緊張する。誰も動かない。咳払い一つない。

石川が震える指を伸ばす。空中に、まるで本物の炊飯器があるかのように、慎重に手を動かす。「『炊飯キーを押してください』...」その声は囁きだ。「これで...君と僕は...結ばれる...本当に...いいんだね...?」

千葉が頷く。涙が頬を伝う。「ええ...あなたとなら...怖くない...」

二人の指が重なる。そして、ゆっくりと...

「ピッ!」千葉が澄んだ声で効果音を出す。

その瞬間、観客たちが「おおおお!」と歓声を上げる。拍手が巻き起こる。

石川と千葉が抱き合う。今度は本当に嬉し涙だ。二人とも笑顔で泣いている。

「やった...!」

「やったわ...!」

富山がナレーションを入れる。声が感動で震えている。「こうして...二人は...炊飯という名の絆で結ばれた...『炊飯時間は約45分です』...その時間は...二人にとって...永遠のように感じられた

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『俺達のグレートなキャンプ141 恋愛ドラマ風に炊飯器の取扱説明書を音読』 海山純平 @umiyama117

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