告白します
リュカの告白を聞いた後、私は彼にこう言った。
「明日、ミサが始まる前に教会へ来て下さい」と。おそらく彼は来るだろう、彼は本来人など殺せない素直で純朴な人間なのだから。
次の日、リュカは私の言いつけを守りミサの前にやって来た。
「シスター・ジャネット、その、一体何のご用でしょうか?」
昨日の今日とあって彼は気まずそうにしているが、私はにこりと微笑みかける。
「心労で疲弊している様にお見受けしたので貴方の為に薬を調合致しました。貴方だけの特別なものなので他の方の目に触れぬ様にお渡ししたくて」
私はシロップで溶いた薬の小瓶を渡す。
「俺にだけ、ですか?」
彼の頬に朱が差す。そういう初な反応がとても可愛らしくて愛おしい。
「私も愛用しております」
もう一瓶、同じ薬を取り出して先に飲んで見せる。するとリュカはさっそく私を倣って薬を飲み込んだ。
彼の喉がゴクリと動いたことを確認した後、私はリュカを真っ直ぐに見つめて言う。
「私も貴方に告白します。私、ジャネットはリュカのことをお慕い申し上げております」
リュカは目を大きく見開いて驚いた様だが、直ぐに嬉しそうに顔をゆるめた──が、その表情は苦悶に歪む。
「ぐっ、ううっ、ああっ!」
首元を押さえ、床に膝をつくリュカ。口からは泡を吐いている。
分かるわ、喉が焼けるように痛いよね、立っていられないよね、苦しいよね。そういう毒なの。私も今貴方と同じ苦痛を味わっているからね。
倒れ込んだ彼の上に覆い被さり、私は最後の力を振り絞る。
「愛しているから、一人では逝かせないわ。安心してね」
そうして私はリュカと共に生涯を終えた。晩秋の頃だった。
おお、神よ。我が神よ。
私達の罪を赦し給え。
……でもまぁ無理ならそれでも構いません。
≪終≫
告白します あおじ @03-16
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