告解室にて
リュカを告解室へと入れ、本当はいけないことだが壁を隔てたそこには神父様ではなく私が入った。
「神の慈しみを信頼して貴方の罪を告白して下さい」
するとリュカはしばらくの間黙っていたが、やがて口を開く。
「……俺は、人を殺しました」
あまりに衝撃的なそれに私はハッと息を呑む。
彼は咽び泣きながら告白を続ける。
「俺は争いで故郷を失い傭兵をしていました。仕事とはいえそこで沢山の人を殺しました」
それは、仕方ないことだ。私はたまたま運良くシスターになれたけど、実の所どうなっていたかは分からない。
「ある時、突如として俺のいた傭兵団が解雇されて俺達はたちまち困窮してしまいました。皆俺と同じく戻る故郷もない者ばかりで、金もありませんでした。……だから──」
リュカは一呼吸置いてから吐き出す。
「争いとは無関係な村を襲い、兵士でもない人々を殺して食料や金品を奪いました」
脳裏に荒れ果てた故郷と殺された家族や住人の姿が鮮明に甦り体が震え始める。
「俺はとある家に押し入り、父親と母親、そして姉と弟の家族を斬り殺しました。その時のことは決して忘れません。……最後に残った男の子が“ジャネット、ジャネット”と先に死んだ母親か姉の名前をずっと呼んでいたのが耳に残っています。今でもあの声が聞こえてきて、俺はなんてことをしてしまったのだろうかと後悔してもしきれないです」
……ああ、そうか。
「俺が貴女の名前をずっと呼べなかったのはそれが原因なのです。……俺は自分のしでかした事が恐ろしくなって傭兵団……いや、盗賊団を抜けました。そうして行き倒れている所を助けられ、そしてシスターに救われたのです」
そうだったのか。
「俺は、他の誰にも、神にだって赦されなくてもいい。でも貴女にだけは赦されたい。……っ、愛しのジャネットにだけは、」
彼が……いや、コイツが私の大切なものを全て奪ったのか。
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