時空警察官になりたい高校2年生の話

@arigaip

第1話

「また、公園?」


『うん。』


「公園ばかりで、もう飽き飽きだ」


『お前は見てるだけだからね』


「これでも一応仕事なんだろ?」


『生まれ変わったら、そっちに行きたいよ。』


「.....で、いつ始まるんだ?」


『今、今今、映すからちょっと待って』


船酔いみたいな感覚。あまり好きではない

錆のないブランコ、平らな砂場、冷たい水の出る蛇口


一気にすべて変わっていく


「終わったか?」


『今、おまえをどかしただけだから、テキトーにそこで待ってて』


「....」


使い古されたジャングルジム、誰かが持ってきたゴールポスト、ぬるま湯しか出ない噴水


あるものがそもそも違う。けど名前はどちらも同じく乍芽津さくめつ公園だ。


ここは何年だろうか。ズレはあっても1ヶ月程度と聞く。けれど、諦めきれない。


「あ、犬」


『できたぞ、映った。まずは腕だけもってくぞー』


「え、いま、犬 さわっ」


自分の右腕がない。感触はある。最悪な感触。

10歳の時の、衝動に任せて友達を殴った、あの感触。


『さすが、いい身体だ。つよいね、拳がとくに』


「ってぇ...」


『次は足!いかせてもらう。できればいい感じに振ってもらえるとありがたい』


「わかった...」


片腕のない男が、朝の4時に足を蹴り上げている。何もない空気にむかって。途端に消える足、また凄まじい衝撃が足に伝わる。


『すごいな、移動のスピードだけで十分な威力だ』


「これで、おわりか?」


『もう少し試したいけど、あいにく相手がいないや』


「じゃあこれはずしていいか?」


『まぁ、いいけど明日の放課後必ずつけてね。じゃないと怒られるんだよ』


「はい、はいはい、じゃあな」


『あっ、あと まっ..._____』


耳に入ってるイヤホン?みたいなやつと、目にはりついたコンタクト?みたいなやつを手っとり早く外した。


明日の放課後、またつけなければならないことを考えると、自然と地面に叩きつけそうになった。


あいつらの試験に受かったら、自分は晴れて警官になれる。だからそのためにも死力を尽くさねばならない。勝手に身体を動かされるのは癪だが、ここは我慢だ。


家に帰って、支給品を全てエレベーターみたいな装置にのせて洗濯する。次元を移動すると見えない汚れが溜まるらしい。これを忘れると腕が1時間肩叩きに使われてしまう。




今日の夕飯はシチューらしい。羨ましい。食べたかった。いつか絶対もう一度母さんの料理を食べてやる。
























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