実話・作者と犯人の三日間に及ぶ戦いの記録
西の果てのぺろ。
実話・作者と犯人の三日間に及ぶ戦いの記録
あれは、9月末の土曜日の朝。
まさか、ここから月曜の朝まで、犯人との壮絶な命の駆け引きをする事になるとは、作者も想像だにしていなかった。
この日、作者は仕事が休みという事で、気持ちよく寝ていた。
「ふぁ~。……数日ぶりに長時間寝むれた……」
ぽりぽり。
作者は、欠伸をしながら、膝裏をかいた。
「うん?」
ここでようやく、自分の体の異変に気が付く。
「……膝裏を蚊に刺されている?」
作者は右足の膝裏、内側近くが、微かに赤くなっているのを、辛うじて確認できた。
「くそー、今年は一度も刺されていなかったのになぁ。──今日は一日、蚊取り線香焚いておくか」
作者はこの時、蚊に刺された事を、あまり、不思議に思っていなかった。
寝る時は、半ズボンタイプのスウェットだったからだ。
これなら、刺された場所(膝裏)を考えると、蚊による犯行も可能である。
「だが再犯はありえない(キリッ)」
作者は、すぐに、リキッドタイプの蚊取り線香をコンセントに突き刺す。
そして、念には念を入れ、半ズボンから普通のスウェットに履き替え、靴下も履く。
これなら、蚊に刺される事があっても、腕か顔に限定されるので、蚊の犯行に気が付くのも早い。
万全の体制で作者は、この日、蚊に刺される事無く、一日を過ごすのだった。
翌日、日曜の朝。
「……かゆい……」
ぽりぽり……。
目が覚めたら、蚊に刺されたところが気になって、すぐにかく作者。
ぽりぽり……。
「……うん? ──え? まさか!?」
作者は、ここで、かゆい場所が、右足の膝裏だけでなく、右太もも上部にもある事に気づいた。
「そんな馬鹿な……。前日は俺の失態だった。室内に蚊の侵入を許し、そのうえ、半ズボン。あれは刺してくれと言わんばかりの恰好だった。これは平和ボケしていたと非難されても反論できない……」
しかし!
作者は、朝から目を剥く。
「これは、どういう事だ……? 昨夜は長ズボンで就寝した。寝ている間に、ズボンを脱ぎ、蚊に刺されてから、ズボンを履き直さない限り、刺されるのは不可能。つまり、これは、完全密室事件!」
作者はそこまで口にすると、震えた。
これはもう、作品の執筆どころではない。
作者は、最初から推理を改める必要を迫られていた。
それは、腫れ具合から、蚊に刺されたものであると、決めつけていたからだ。
もし、万が一、容疑者(蚊)が、ズボンの裾から慎重に侵入し、太ももまで到達して血を吸い、そこから慎重に脱出したのなら話は別である。
しかし、それはありえないだろう。
そうなると、犯行を行ったのは、蚊ではない?
作者は、蚊の犯行から、ダニの犯行説に切り替えた。
ダニなら、布の内部に侵入して、肌を刺す事が可能だからだ。
「だが、ダニに刺されて、こんな痕になるだろうか?」
作者は、多少、動揺していた。
右足の膝裏と太もも上部の痕はどちらも一緒に見える。
つまり犯人は同一人物である可能性が高い。
痕だけを見たら、誰もが「蚊じゃない?」と証言するだろう。
しかし、最初の犯行はあり得るが、二回目の犯行は、ほぼ不可能だ。
つまり、蚊はシロという事になる。
動機はあるが、犯行に及べない状況だから、蚊のアリバイは成立していると言っていい。
もしこれで、蚊が犯人なら、密室(ズボン内部)による完全犯罪である。
はっ!?
「完全犯罪だと……。いや、そんな事はありえない! よく考えろ、俺! ……ズボンを降ろす機会はあった……。そう、お風呂の時間だ! あの時、服を脱いで、風呂に入り、着る間の時間に蚊の犯行は可能じゃないか! 確率としてはかなり低い犯行の可能性だが、ゼロじゃない」
作者は、一筋の光明を見出した。
刺された痕は、やはり蚊のものだ。
動機もある。
あとは、密室(ズボン内部)の謎だけだったのだから、浴室も蚊取り線香を焚けば、解決だ!
作者は、日曜の朝から、浴室のコンセントに、リキッドタイプの蚊取り線香をぶっ差すと、解決を確信するのだった。
その日の夜。
お風呂に入ろうと、作者は、服を脱いだ。
蚊に刺されたところが赤く腫れ、かゆい。
「結局、二か所も刺されたなぁ……。──ん? ま、まさか、そんな!?」
作者は、かゆくてぽりぽりかいていた自分の右腕の場所に愕然とした。
それはお尻だったからだ。
そう、第三の犯行現場は、お尻である。
つまり、スウェットとボクサーパンツという二重の密室を越えての犯行だ。
それに気づいた瞬間、作者の脳裏には完全犯罪という言葉が再度過った。
「う、嘘だー!」
裸のまま膝をつく作者の絶叫が、浴室に木霊する。
最初の犯行は、右足の膝裏。
第二の犯行は、警戒する作者をあざ笑うかのように、右の太もも上部。
そして、第三の犯行は、万全の対策をした作者の目を掻い潜り、二重の密室(ズボンとボクサーパンツ)をすり抜けて、お尻である。
膝裏、太もも、お尻と、確実にち〇こに迫っているのは、偶然か? いや、これは作者に対する警告なのかもしれない……。
何をやっても、こちらは、お前の警戒網をすり抜けて、殺す(刺す)事ができるんだぞ、という……。
まさか「蚊」如きに、ここまで、追いつめられると思っていなかった。
確実に、蚊はち〇こに迫ってきている。
明日の朝、起きたら、自分のち〇こは、蚊に刺されているかもしれない。
そう考えると、作者は恐怖に震えるのだった。
「はっ!」
月曜の朝、作者は悪夢にうなされて目を覚ました。
最悪の目覚めだ。
「俺のち〇こは無事か!?」
作者は、寝起きにも拘らず、ズボンとパンツを降ろして確認した。
「さ、刺されてない……!」
作者は、大きな安堵と共に脱力した。
だが、それも一瞬の事である。
すぐに、正気に戻ると、他に刺されたところがないか、体中を確認した。
「膝裏、太もも上部、お尻……、それ以外は刺されていない!」
作者は、不安を払しょくするように、ガッツポーズを股間丸出しでするのだった。
しかし、このままでは真相は薮の中だ。
でも、蚊の事ばかり考えてはいられない。
平日の月曜の朝、これから仕事だ。
「トイレ、行こう……」
作者は身を震わせて、トイレに駆け込む。
お腹の調子もよくない。
「大きい方もしておくか……」
作者は、ズボンを降ろし、便座に座った。
「……それにしても、奴(蚊)は、どうやって、犯行を可能にしたんだろう……」
考えても考えても、蚊の完全犯罪を見破る事ができなかった。
自分に油断はなかった。
現場でやれる事は、全てやったつもりだ。
警戒も怠っていない。
それでも、被害を三人(三か所)も出してしまった……。
作者は蚊に対し、敗北を認めるしかないと、ガックリと項垂れるのだった。
「うん?」
『え?』
作者には、驚きの声が聞こえた気がした。
そう、左太もも、膝近くに、蚊が止まっていたのだ。
まさに、目があったと思えた瞬間だった。
「お前かい!」
というツッコミと同時に、左手が蚊を叩き潰し、事件は呆気なく幕を引く事になった。
「……結局、犯人(蚊)は、盲点だったトイレで、無防備となっていた被疑者(作者)相手に三日に及ぶ犯行を重ねた末、四人目(四カ所)も刺した。最後は、被疑者の反撃に遭い、容疑者死亡で解決か……。やり切れんな……」
作者は、お尻をぽりぽりかきながら、家を出る。
その日は珍しく涼しい風が吹いている、秋の兆しが見えてきた一日の始まりだった。
──────────────────────────────────────
あとがき
最後まで読んで頂きありがとうございます。
つい先日起きた実話を、作者の主観で再構成して書かせてもらっています。
大袈裟な内容なのは、大目に見て頂けると幸いです。笑
よろしかったら、フォロー、コメント、♥いいね、★レビューなど頂けら、作者が確実に喜びます。
他にも作者の作品が色々ありますので、そちらも読んで頂けたら嬉しいです。
それでは、他の作品でもお会いしましょう!(。・ω・)ノ゙♪
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実話・作者と犯人の三日間に及ぶ戦いの記録 西の果てのぺろ。 @nisinohatenopero
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