バス・ストップ
キカイ工
バス・ストップ
誕生日にバス停が届いた。
もしやハッピーバース停というくだらない、しかし万が一の可能性を寡少な心当たりから、つまり数少ない友人から検討してみたが、そんなつまらないことを喜びそうなのは僕くらいなもので、これはおそらく誤配だろうと結論づけた。
しかし本当に誤配だろうか。僕が知らなかっただけで、今日からここがバス停だという、僅かに残る可能性を排除するわけにもいかない。そこで念のため、庭にあった古びた木製のベンチと一緒に家の門口にバス停を設置してみた。すると何処からともなく女がやって来て、バスを待つようになった。
入り組んだ小さな路地の奥の奥、そのうえ標識板にあるべき路線図も時刻表も真っ白で、これでは当分バスに発見してもらえそうにない。
毎日ここを訪れては、来ることのないバスを待つ女といつしかベンチに並んで腰かけ、お喋りをするようになった。
雨の日は避難した玄関ポーチに座り込み、ふたり空を見上げた。今日も突然の通り雨。明るい空を指差し「お天気雨なら断然ビニール傘がいいよね」と笑う君を僕は好きになった。
やがて季節が一巡する頃、ふたりの誕生日が同じ日だと知った。
たくさん話をしたから君の行きたい場所を僕はもう知っている。ああ、そうか。このバス停は僕じゃなく、君への誕生日プレゼントだったのかもしれない。
ここを離れることができない僕は、バスの行き先と発着時刻をいつ書き込むだろう。
バス・ストップ キカイ工 @kikaikou1
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