トーク

トーク

「聞いて！！」

　アイスが食べたいと走っていった友人が、行き以上の勢いで帰ってきた。なのに両手に持ったコーンのアイスが微動だにしてないのは驚きを通り越してちょっとした恐怖だ。アンタ、恐怖を我が物にでもしてるの？

「今すっごいもの見た！」

　私は現在進行形で見てるけどね。血走った目をギラギラさせてる女子大生っていう知り合いにはできたら見せたくない代物だけど。　

　彼女は大げさな身振りを取ろうとして、両手がアイスで塞がっているのに初めて気づいたみたいで、2つとも私に渡してくる。

　で、ヒートアップ。

「アイス買おうと思って並んだら前が男子高校生2人だった訳よ」

　両手を使って示してくるのはどうやら並んでいたという高校生のシルエットのつもりらしい。大型犬がどうとかスコティッシュどうしたとかとも聞こえるけど。

　ゴメン、アンタより大きいってのと、少し小さいってことしか分かんない。

「これがさぁ、おっきいコが小さいコの頭に顎載せたりしてるのよ。これで萌えずして何が萌かと」

　頬を紅潮させ、自分の腕で自分を抱きしめて身悶えする。離れていいかしら？　他からの視線が痛いのだけど。

「しかもよ！！」

　聞こえてやしない。こうなるともう彼女の独壇場。程々正気に戻るまで手のつけようがない。

　これさえなければまだマトモなのに、一緒に出かけると7割方こんな感じだ。なんで、私彼女の友人まだやっているのかしら……。

「1人が『俺チョコクッキー』って注文した訳よ。もう1人が『あー俺は……』って迷い始めてね。耳を澄ませてたら、生キャラメルとチョコミントのどちらにするか決められなかったみたいでさ」

　気持ちはわかるわね。どちらも季節限定ってイメージだし。実際は割とどっちも年中通してあるけど。

「『はやく決めてくれない？』『いや、どっちも捨てがたいぃ〜』『だったらダブルにすればいいじゃん』『今月厳しいの！』『はぁ〜、もうしゃーない』」

　そうこうしている間も一人芝居は続いている。

「『すみません、チョコクッキーやめます。生キャラメルにしてください。それと、チョコミント』『うえっ』『半分づつ分けりゃいいだろ』ですって！！　アンタ達カップルか？　カップルなんだな！！」

　で、聞いたわけ？

「仲睦まじくアイス食べさせあっているところに割って入れるわけないでしょ！　私まだ馬に蹴られて死にたくないわ。うん、漲ってきた。今から原稿書いてくる」

　こら、ちょっと。アイスは！！

「食べといて」

　行ってしまった………。

　仕方がないので、残されたアイスを舐める。溶け始めていてそろそろ垂れそうだし。

　生キャラメルとチョコミント味。ちょっと重い、けど。

　ワンコ系と猫系かぁ。アリって言えばアリよね。

　確かあの子、来週イベントだって言ってたっけ。コピー本なら何とかなるかしら。