『俺達のグレートなキャンプ127 震源地になるほど思い切り餅つきするか』

海山純平

第127話 震源地になるほど思い切り餅つきするか

俺達のグレートなキャンプ127 震源地になるほど思い切り餅つきするか


石川が両手を大きく振り上げ、朝の清々しい空気を胸いっぱい吸い込む。テンションは既に最高潮だ。

「よっしゃー!!今日もグレートなキャンプの始まりだぁー!!」

千葉が寝袋から這い出てきながら、目をこすりこすりしている。

「おはよう、石川!今日はどんな奇抜なキャンプなんだ?もうワクワクが止まらないよ!」

富山がため息混じりに焚き火の準備をしながら、眉間にしわを寄せている。

「はぁ...また何か始まるのね。今度は何よ?まさか昨日の『熊の真似して威嚇キャンプ』みたいに他のキャンパーさんに迷惑かけるんじゃないでしょうね?」

石川が目をキラキラ輝かせながら、軽トラックから巨大な鋼鉄の臼と杵を取り出す。金属特有の鈍い光沢が朝日に反射して眩しい。その臼の大きさは普通の臼の10倍はありそうで、杵も電柱のような太さだ。周囲のキャンパーたちがザワザワし始める。

「じゃじゃーん!今日のテーマは『震源地になるほど思い切り餅つき』だ!!この特注の鋼鉄製超巨大臼と杵で、地球の裏側まで響くような餅つきをするぞ!!重量なんと臼が100キロ、杵が50キロの本格仕様だ!!」

千葉が飛び跳ねながら手をパンパン叩いている。

「うおおお!!すげぇ!!鋼鉄製って...これもう工業用じゃない!?石川、君は天才だ!!」

富山が頭を抱えながら、心配そうに周りを見回している。

「ちょっと待って!何その重量!?50キロの杵って...普通の人が持てる重さじゃないでしょ!?」

石川が杵を持ち上げようとして、全身の血管が浮き出るほど力を込める。顔は真っ赤になり、額から滝のような汗が流れ落ちる。

「うぉおおおお!重い!思ったより重い!!」

千葉が慌てて駆け寄って、二人で杵を持ち上げようとする。二人とも筋肉が隆々と盛り上がり、汗が飛び散る。

「うおおおお!これ本当に50キロか!?もっと重い気がする!!」

「設計図では50キロって書いてあったんだけど...まさか製造ミス?」

富山が呆れ果てた表情で立ち尽くしている。

「石川...まさかちゃんと仕様確認しないで注文したの?」

三人がかりでようやく杵を持ち上げ、石川が全身汗だくになっている。シャツが汗でびっしょりと濡れて肌に張り付いている。

「よし!これが俺達の『グレートなキャンプ』だ!困難こそが醍醐味!!筋トレにもなって一石二鳥だ!!」

千葉が息を切らしながらも目をキラキラさせている。

「確かに...普通じゃないな!この重量感、なんだかワクワクしてきた!!全身の筋肉が悲鳴を上げてる!!」

富山が心配そうに二人を見つめている。

「あの...本当に大丈夫?腰とか確実に痛めるわよ?」

石川が突然ひらめいた顔をする。汗で髪がぺったりと額に張り付いている。

「そうだ!高所から飛び降りて餅つきすれば、重力と体重が加わってより強力になるぞ!!物理の法則を利用した科学的餅つきだ!!」

千葉が手をパンと叩いている。

「なるほど!位置エネルギーを運動エネルギーに変換するんだな!!さすが石川!!理系だ!!」

富山の顔が青ざめている。

「ちょっと待って!それって超危険じゃない!?第一、どこから飛び降りるって言うの?」

石川が辺りを見回して、近くにある展望台を指差す。高さ5メートルはありそうな木造の展望台だ。

「あそこだ!!あの展望台から飛び降りれば完璧だ!!」

富山が慌てて止めに入る。

「だめだめだめ!!絶対だめ!!怪我したらどうするの!?というか死ぬわよ!?」

結局、石川と千葉が脚立を3段重ねして、高さ3メートルほどの即席ジャンプ台を作った。富山は諦めたような表情で見守っている。

石川が脚立の上で杵を構えて、全身汗だくになりながら気合を入れている。筋肉が隆々と盛り上がり、まるでボディビルダーのような体つきだ。汗が太陽光にキラキラと光っている。

「よし!いくぞ!!震源地級餅つき、第一撃!!俺の全体重と重力の力を見せてやる!!」

石川が脚立から勢いよく飛び降りながら杵を振り下ろす。空中で汗が飛び散り、まるでスローモーションのような光景だ。筋肉が躍動し、雄叫びが木霊する。

「うおおおおおおお!!!」

ズドガアアアアアアアアン!!!

鋼鉄の杵が鋼鉄の臼に激突した瞬間、想像を絶する爆音がキャンプ場全体に響き渡る。音の衝撃波で近くのテントがバタバタと揺れ、鳥たちが一斉に飛び立つ。川で釣りをしていた人々が竿を取り落とし、管理棟の窓ガラスがビリビリと震える。

「うわあああ!!何だ今の音は!?爆発か!?」

石川が着地と同時に膝をガクガクさせながら、それでも満面の笑みを浮かべている。汗が滝のように流れ落ちている。

「よし!完璧だ!!これぞ震源地級!!」

しかし次の瞬間、石川の顔が青ざめる。

「あ...あれ?腰が...腰がああああああ!!」

石川がその場にうずくまり、腰を押さえて悶絶している。

千葉が興奮して脚立に駆け上がっている。

「俺もやる!!どんなキャンプも一緒にやれば楽しくなる!!石川、大丈夫か!?」

「大丈夫だ!!続けろ千葉!!」

千葉が同じように飛び降りながら杵を振り下ろす。汗が宙を舞い、筋肉が躍動する。

「うりゃあああああ!!」

ズドガガガガガン!!!

さらに大きな音が響く。今度はキャンプ場全体が微妙に揺れる。管理人が慌てて飛び出してくる。

「ちょっと!そちらのサイト!一体何をされてるんですか!?」

富山が冷や汗をかきながら管理人に向かって駆け寄る。

「す、すみません!餅つきなんです!ちょっと...大きめの餅つきを...」

管理人が呆然と巨大な鋼鉄の臼と杵を見つめる。

「これは...餅つき...なんですか?工事現場の重機かと思いました...」

千葉も着地後、全身がガクガク震えている。

「うわあ...全身に衝撃が...でも爽快だ!!」

石川が腰を押さえながらも、まだやる気満々だ。

「よし!二人で同時にやったらもっとすごいぞ!!」

富山が必死に止めに入る。

「だめよ!二人とももうフラフラじゃない!休憩しなさい!」

しかし二人は聞く耳を持たない。脚立を二つ並べて、同時にジャンプする準備を始める。

石川と千葉が同時に脚立に上り、杵を構える。二人とも汗でびっしょりになり、筋肉がパンパンに張っている。

「せーの!!」

二人が同時に飛び降りる。

「うおおおおおお!!」「りゃあああああ!!」

ズドガガドドドドドン!!!

今度の衝撃は桁違いだった。キャンプ場全体が激しく揺れ、近くの木の葉がざわざわと音を立てる。そして...

「地震だ!地震だ!!」

キャンプ場にいた全ての人が慌てて外に飛び出してくる。テントから這い出してくる人、車から飛び降りてくる人、みんな慌てふためいている。

「震度3!震度3です!!」

誰かがスマホで地震情報を確認している。

石川と千葉は着地後、完全にへたり込んでいる。二人とも全身汗だくで、息も絶え絶えだ。

「や...やったな...千葉...本当に震源地になった...」

「ああ...石川...俺達、地震起こしちゃったよ...」

富山が青ざめた顔で二人を見下ろしている。

「あんたたち...まさか本当に地震起こすなんて...」

管理人が駆け寄ってくる。

「大丈夫ですか!?地震の震源地、この辺りみたいですが...」

石川が苦笑いを浮かべながら立ち上がろうとして、再び腰を押さえて座り込む。

「あいたたた...腰がもうダメだ...全身筋肉痛で動けない...」

千葉も同様にうめいている。

「うう...腕が上がらない...足も動かない...でも達成感はすごいぞ!!」

餅米はとっくに蒸し上がっていたが、二人とももう動けない状態だ。富山が呆れながらも、一人で餅をこねている。

「まったく...結局私が一人で普通の餅つきしてるじゃない...」

周りのキャンパーたちが心配そうに集まってくる。

「大丈夫ですか?救急車呼びましょうか?」

石川が手を振って断る。しかし顔は痛みで歪んでいる。

「大丈夫です...これも『グレートなキャンプ』の一部ですから...」

富山が一人で餅をまとめて、普通に網で焼き始める。

「はい、お疲れ様。普通の焼き餅よ」

石川が焼き餅を受け取りながら、ふと気づく。

「あ...そういえば...俺、餅をどうやって食べるか全然考えてなかった...」

富山が呆れ果てた表情で石川を見つめる。

「は?何それ?餅つきしておいて食べ方考えてないって何よ?」

「いや...震源地級の餅つきをすることに夢中で...食べることまで頭が回らなくて...」

千葉が笑いながら餅を頬張る。

「でも美味しいじゃないか!普通の焼き餅だけど、俺達が命がけで作った餅だ!」

石川も痛みをこらえながら餅を食べる。

「確かに...美味しい...でも普通だな...」

富山がため息をつく。

「当たり前でしょ!結局普通に蒸して普通に焼いてるんだから!あんたの鋼鉄臼は飾りよ!」

その時、他のキャンパーたちが集まってくる。

「あの...さっきの餅つき、すごかったですね!震源地になるって本当だったんですか?」

石川が誇らしげに胸を張ろうとして、腰の痛みで顔を歪める。

「ああ...俺達の『グレートなキャンプ』は常に予想を超えるからな...」

子どもが目をキラキラさせながら聞いてくる。

「僕たちも餅つきやってみたい!」

富山が慌てて止める。

「だめよ!普通の餅つきにしなさい!鋼鉄の臼なんて使っちゃダメ!」

管理人が苦笑いしながら近づいてくる。

「あの...今度いらっしゃる時は、事前に一声かけていただけますか?地震の備えをしておきたいので...」

石川がにっこり笑う。しかし腰を押さえたままだ。

「もちろんです!次回もお楽しみに!!」

千葉が興奮冷めやらぬ様子で、しかし動けずに寝転んだまま話している。

「ああ、次は何をするんだろう!でもしばらく筋肉痛で動けそうにないな...」

富山が小声でぼやく。

「次回って...また何か企んでるのね...今度こそ止めないと...」

夕方になっても、石川と千葉は完全に動けない状態が続いていた。二人とも全身筋肉痛と腰痛で、テントの中でうめいている。

「痛い...全身が痛い...でも最高のキャンプだった...」

「ああ...俺達、本当に地震起こしちゃったな...伝説だ...」

富山が呆れながらも心配そうに二人の面倒を見ている。

「まったく...男って何でこう無茶するのかしら...」

キャンプ場の他の利用者たちは、今日の出来事を語り草にして盛り上がっている。

「震源地級餅つきって言葉、今度使ってみよう!」

「でも真似しちゃダメよ!危険すぎる!」

管理人が掲示板に新しい注意書きを貼っている。

『キャンプ場内での工業用器具の使用、高所からの飛び降り行為は禁止いたします』

石川がそれを見て、寝転んだまま笑っている。

「俺達のせいで新しいルールができちゃった...」

千葉も笑いながらうめいている。

「でも楽しかったな...痛いけど...すごく痛いけど...」

富山がため息をつきながら片付けをしている。

「あんたたち、明日は絶対に安静にしてなさいよ。下手したら入院よ?」

「大丈夫だ!俺達は不死身だ!」

石川がそう言った瞬間、くしゃみをして腰に激痛が走る。

「痛たたたたた!!」

「不死身じゃないじゃない!」

富山の突っ込みが夜空に響いた。

翌朝、石川は全く動けず、千葉も這って移動するのがやっとだった。それでも二人の目は次の『グレートなキャンプ』への野望で輝いていた。

「次は『俺達のグレートなキャンプ128 宇宙まで届くほど巨大な花火大会』だ!」

富山が即座に却下する。

「絶対だめ!」

こうして、伝説の震源地級餅つきキャンプは幕を閉じた。しかし、石川たちの『グレートなキャンプ』への挑戦は、まだまだ続くのであった。

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『俺達のグレートなキャンプ127 震源地になるほど思い切り餅つきするか』 海山純平 @umiyama117

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