見果てぬ先の先

山本楽志

月刊『らい・らっく』9月号より



 特集「怪談噺」もいよいよ大トリ。

 最後はこれまでとは趣向を変えて、破風亭はふてい宿木やどりぎの高座でのマクラを御覧いただこう。

 破風亭宿木は一人会「宿木の長い物には巻かれろ」を定期的に開催している。一人会と銘打っているものの、必ずゲストを毎回一人迎える変則型で、これまでも潮家うしおや恭蔵きょうぞうみなと条句じょうく港庵こうあん木子すもも秋海堂しゅうかいどう紫雲英げんげなどなど、落語演芸協会、大衆落語協会の垣根を越えた老若男女どころか百鬼夜行の様相を呈する面々が招かれている。

 くせ者ぞろいの落語界で、なかでも癖の強い名前が連なるイベントだけに、なにかとエピソードに事欠かない。

 今回の速記もその会での三年前のある公演がもとになっている。

 もとはインタビューを予定していたとのだが、この記事が出ている頃には既に各種メディアで報道されているだろうアノ件のおかげで、どうしても時間の折り合いがつかず、そこでテーマに合っているかもしれないと記録用のテープを提供してもらえた。

 当日はゲスト枠に港庵木楽いちいが「二階ぞめき」を、宿木は「道灌」「夢の酒」「水屋の富」の三席を行い、速記はトリの「水屋の富」のマクラとなっている。

 内容の都合上、日時や会場は割愛しているがご了承を。


             *


 本日のような会にお集まりのお客様ですから、言わずもがなではあると思いますが、言いませんと話にもなりませんので、続けさせていただきまして、落語の公演には大きく分けまして二種類がございます。

 それが寄席とホール落語です。

 寄席は落語など演芸を行うため一年間ほぼ毎日営業している常設施設で、東京の鈴本演芸場、新宿末廣亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場、国立演芸場は、ご存知のお客様も大勢いらっしゃると思います。そしてホール落語はそれ以外の場所で行うことを指します。

 今回みたいな会がホール落語ですね。

 劇場が違うだけかといえば、そうとばかりも申せません。

 寄席の場合、大体三時間ばかりの公演中、色物さんを含めまして十組以上が入れ代わり立ち代わりで出演いたしまして、だから出入りも非常に激しい。楽屋仕事や舞台の整えをしていないといけない前座を除きまして、みんな自分の出番直前にやって来てやることやったらさっさと帰るというのが基本です。

 そんなに何人と入れるほど楽屋も広くありませんし、みんな暇でもありませんし、暇があっても仲良くはない。

 なんて冗談ですよ。冗談ってことにしておいてください。

 そういう具合ですから、前後で示し合わせてどういう噺をやろうという打ち合わせもできません。なので各寄席の楽屋にはネタ帳と申しまして、だれがいつ何の噺をやったかを記録する帳面が用意されております。出演する噺家は、それを確認いたしまして、今日は前の人がアレをやったからじゃあこちらはコレをやろう、という風にして掛ける演目を決めていきます。

 その際暗黙の了解がありまして、前の方が掛けたネタに似た噺はやっちゃいけないということになっております。例えば前の方が丁稚の出る噺をしていたら、その日はもう丁稚が出てくる噺はできなくなるわけです。同じような噺を続けてお客様を飽きさせない工夫の一つですね。

 だから寄席に出る噺家にはなによりレパートリーの数が求められますし、咄嗟に切り替えられるアドリブ力も必要になってきます。

 ネタの数もなく、機転の利かない連中がやっているのがホール落語……というわけじゃもちろんございません。

 こちらは出演者を限定して、どういう噺をするか事前に取り決めておく分、全体を通した趣向や完成度が問題になってくるんですね。ホールの方が大体入場料も寄席より高いですしね。

 ですので、どうしたって寄席で掛かりやすい噺、ホールで掛かりやすい噺というのがでてきます。

 それからマクラの差があります。

 今しゃべっているみたいに本題に入る前のおしゃべりが、時間がきっちりと決まっている寄席ですと短めになりがち、なかにはばっさり省略して挨拶もそこそこにすぐに噺をはじめちゃう方もいらっしゃいます。

 それがホールになりましたら、なにしろ時間配分はこちらの匙加減ですから、しゃべりたいだけ言いたいだけしゃべり放題の言い放題なんてこともできるわけです。

 このマクラも噺自体へつなぐための大事な前置きで、さりげなく現代では使われなくなった言葉や言い回し、すたれた習慣の説明などを盛り込んで、お客様を落語の世界へ少しでも引き寄せる役割をしております。

 なので名人上手といわれる師匠ですと、マクラでまず十分に噺本編に匹敵する満足をお客様に感じていただけるようになります。

 それこそ落語界から三人目の人間国宝に選ばれました十代目柳家やなぎや小三治こさんじ師匠のマクラは「ま・く・ら」という一つの完成した話芸でもありました。

 とはいえ噺に入るまでの導入でもありますから、ある程度話す内容が決まっていたりするのも事実です。

 例えば子供の出てくる噺でしたら、自分とこの息子なり娘なりの話題をまず語って、そこから本編に入るとお客様も物語の世界にすっと入りやすいですし、噺家の方でもそういうお客様の様子をうかがいますと噺に集中しやすい。

 だもんで落語とは関係のない日常の話題をなにくわぬ顔で即興でしゃべっているふりして、実はそれも何回となくこれまで語ってきたものなんてことはままあります。例えば上方落語のかつら枝雀しじゃく師匠には「地球最後の日」というタイトルまでついた有名なマクラがあったくらいです。

 ただ、わたくしのようなペーペーではそんな境地には全然達しておりませんから、毎度毎度同じマクラをやっておりますと、耳の肥えたお客様からは、

『あいつまた同じ話してやがる』

 という目で見られますし、本人も少なからず飽きてきて食傷気味になってしまいます。

 それでなにか新しいタネはないものかと四六時中アンテナを立てていることになるんですね。

 全編変更しなくてもちょこちょこと新しいことを加えていきますと違って聞こえまして、マクラ自体も長持ちしますから。

 そういうわけで、これから本題に入ります前に、ちょっと仕入れたてほやほやの話をさせていただこうかと思います。

 さてさて、でもこんなことを申しましたが、このマクラ、わたくしが日頃からくり返し申しているものか、それともまさに今体験してきた話か、そのあたり皆様、是非御自身で御判断ください。


 つい最前の、木楽いちいさんが「二階ぞめき」をやってくださっている間、わたくしは寄席と比べますと広くて綺麗な楽屋で、嫌なやつと顔を合わせる心配もなく実に悠々とした気持ちで出番を待っておりました。

 けれども、慣れというのはこわいものでして、普段むさくるしい面を突き合わせている楽屋になじんでしまっておりますと、広々とした部屋にぽつんと一人いるのが、なんともこう、お尻が落ち着かないような気分になってくるんですね。

 しかもわたくしのこの会は、前半は出ずっぱりで、中入りを挟んでゲスト――本日ですと港庵木楽師匠に一席お願いするという形式上、楽屋でひとりきりになるのはほとんどこの時間しかないんですね。

 寄席の楽屋は大抵舞台のすぐ近く、新宿末廣亭にいたっては一枚戸を隔てるだけですぐ舞台となっておりますので、それと比べますとこちらのホールは間に廊下を挟んでまだ距離がございます。まあ寄席が例外でこちらが一般的なんでしょうけど。

 ですから普段とも勝手が違いまして、会場の様子が遠く、高座の口調やお客様の反応もはっきりとは聞こえてこないと、なんとなくぽつんと一人取り残されているような気分になってくるわけです。

 二席終えての休憩中ということで、弟子も気を利かせてやって来ませんし、まさか今更舞台袖まで行って木楽さんの高座を拝見するわけにもいかないですし。

「どうして、今日に限って見てたの?」

 と後から聞かれて、

「いや、寂しくて」

 なんて言えないじゃないですか。

 しかたないので細々とした雑務で時間をつぶしておりまして、しまいには協会に出すアンケートの回答なんて本当にどうでもいいものにまで手をつけちゃいましてね。

『今後のますますの落語界の発展に寄与するため、協会理事の選出方法につきましてアイデアがありましたらご回答ください』

 とか書いてあるんですよ。

 落語界ときました。大きく出てますよねえ。知るわけないじゃないですか。わたくしなんて自分の今後ですらわかっちゃいないのに。

 ――リングの上で一対一で戦って勝ち残ったものを理事にする。

 バトル展開ですよ、バトル展開。

 昔から少年漫画の王道。注目を集めて人気を獲得するのに最も効率的な方法といわれているらしいですからね。これを利用しない手はありません。

 噺家なら落語で勝負するんじゃないのかですって? 冗談いっちゃいけません。理事なんてもの決めるのに本職の技術を使っちゃ角が立つでしょう。だからここは遺恨を残さないためにも格闘技ルールでガチンコで戦ってもらうんですよ。

 今昔亭こんじゃくてい秋衣しゅうい師匠や岬家みさきや斗巳輔とみすけ師匠といった長老達がへっぴり腰でリングに上がるわけです。

 これは盛り上がりますよ。観客入れた興行にすれば満員御礼間違いなし。配信もしてネットにも中継させましょう。噺家という噺家、廃業した連中まで含めてみんなこぞって見ますよ。

 いけるでしょ。だから、ばしーっと書いてやりました!

「特になし」

 わたくし、立ち回りのうまさには定評がございます

 そんな他愛ないことを考えながら、事務手続きなどを済ませておりましたところ、ふとあたりがしんと静まり返っているのに気がつきました。

 断片的に先ほどは楽屋まで届いてた木楽さんの噺ぶりやらお客様の笑い声が一切消え去っているのです。

『さてはしくじったかな』

 なんて思いません。

 これは実際体験してみないとわからないところですが、笑いをとれずに場を白けさせると、ただ静かになるだけじゃないんです。沈黙のなかに噺家の声だけが響いて、それがやけに大きく聞こえてくるんです。

 何を口にしたって、その言葉だけが浮き上がって、どこにも収まらずに空疎に漂ってゆく。そうしますとですね、妙にはっきりと聞こえてくるんですよ、本人はもちろん楽屋にいる同業者にも。

 本当に、あのいたたまれなさは、体の奥まで頭の芯まで堪えますよ。

 そういうのではなく、木楽さんのしゃべりもなにもしない。

 いくら耳をすませてみても、ただ楽屋につけられた換気扇の回転と、蛍光灯の唸りがするばかり。

 気配自体何も感じられません。

 自分の耳がおかしくなったのかと、たまらず両手を合わせて打ってみました。

 それは聞こえましたが、音自体がどうにも据わりが悪い。

 普通拍手をしますと、さほど意識せずとも、こうして爆ぜるように響くじゃないですか。

 ところがそれとは似ても似つかない、こんな具合に互い違いに打ちつけてしまったような……

 切れも悪ければ伸びもない、しけた頼りない音がするばかりでした。

 これはどう考えてもただ事じゃない。あわてて弟子を呼ぼうとしたのですが、

「おぅぃ……」

 出した声までしり切れに掠れてしまいました。

 口を開くやいなや何かが視界をよぎったんです。

 楽屋は脇に大きな姿見が備えられているのですが、振り返り際に目に入った鏡面に動くものがあったように思えたのです。

 反射的に、ほとんど体ごとそちらに向き直りました。

 けれどもざっと見たところ特に気になるものもございません。

 鏡は壁の半面を覆うくらい大きなもので、楽屋をほぼ見渡せるほどです。とはいいましても控室ですからね、それほど広い部屋ではなく、入ってすぐは上がり框のように拵えられておりまして畳が敷かれているのですが、別に靴を脱がなくても鏡の前を通れるようになっていて、入り口向かい正面のキャスター付きのよくある事務椅子が置かれて、壁には机代わりの出っ張りが突き出ているところまで歩いていけるようになっています。

 荷物は演者二人のものだけで、事務作業をしておりましたからわたくしのカバンは手もとにあり、がらんとした殺風景な様子が映っておりました。

 いえ、一つだけ、「おや?」と思うものがございました。

 人形です。

 フランス人形や日本人形などのようないかにもなものじゃありませんよ。もっとずっと小さな、指人形って昔はよくあったじゃないですか、底に穴が開いていて指にすっぽりはめる、親指にすっぽり入るくらいのソフビ製の。

 ああいうタイプの人形が、ちょこっと畳の上に置かれた木楽さんのカバンの合間から顔をのぞかせていたのです。

 なにぶん小さなものですから、これまで目につかなかったのかもしれません。

 ひょいと実物のカバンへ視線を移してみましたが、角度が悪いものかわたくしの座る椅子からでは人形は見当たりません。

 それでもう一度鏡に視線を戻しますと、

「うん?」

 違和感がありました。

 カバンはカバンなのですが人形が顔を出している場所が異なっているように見えるのです。

 木楽さんの基本の移動手段は自転車です。都内はもちろん東京近郊もペダルを漕いで現れます。ですので荷物もヘルメットとプロテクター一式を除けば、ほとんどの場合リュックサックひとつです。そのリュックの外にあるファスナーから顔をのぞかせていたのが、カバーっていうんでしょうか、雨などが入るのを防ぐ被せの部分があるじゃないですか、その後ろの首もとにつけられた輪のあたりにいるんですよ。

 いくらなんでもそんな見間違いはありません。驚いてリュックを再度見てみますが、どこにも人形の姿はありません。

 さらに鏡を見ると人形はいる。今度はメッシュ地で外からでも内容物がわかるようになっているポケット部分にすっぽりと収まっています。

 その部分は覚えがあります。わたくしの座っているところからすぐ手前に見えているはずの個所なんです。

 けれども、やはり肉眼ではそんな人形は見えないんです。

 もう一度鏡。人形は、ない。

 ただし、木楽さんのカバンには、です。

 畳敷きの上には一台テーブルが置かれておりまして、その天板にちょんと乗っているじゃないですか。

 ここまできますと、否応なく気づきました。

 わたくしが目を離すたびに、鏡の中の人形が近づいてきているのです。

 試みに実際のテーブルを見てみました。木目調の天板にはスタッフの用意してくれたポットと湯呑みが置かれていましたが、それだけで人形は影も形もありません。

 そこで鏡に視線を戻せばある。それも、つい数秒前にはテーブルの端にいたのが、今では中央近くにまで来ている。

 もう疑う余地もありません。

 わたくしの方に寄ってきているのか、わたくしに寄ってきているのか、そこはわかりませんし、確かめてみる気も起こりません。また、仮に、この人形がわたくしのところにまでやって来たとして、何が起こるのか起こらないのか、想像もつきませんし、想像したくもありません。

 おかげで鏡の向こうの人形から目が離せなくなってしまいました。

 凝視していますから、いやでもその姿が焼きついてきます。

 人形は、親指にすっぽりと収まって、少し頭が出る程度、二・五頭身のデフォルメされた女の子でした。両手を前に垂らしているので、衣装ははっきりとはわかりませんが、スカートを履いているらしいのはわかります。

 青色の髪を後ろで束ねていて、顔は右の目をつむって笑みを浮かべています。

 それだけでしたら、普通はウインクをしていると考えるところなのでしょうが、この時のわたくしには、どうにもつむった目が失われているように思えてなりませんでした。

 少しまたたきをするくらいですと位置を変えることはないようでしたが、油断はなりません。

 その間も、やはり周囲は静まり返ったままでした。

 沈黙のなか、視覚だけに集中させて、鏡に全神経を傾けさせておりましたところが、

――ドッ!

 唐突に大量の笑い声と拍手が流れ込んできました。

「な、なんだぁっ!?」

 驚き戸惑って、ついその聞こえてきた方へと首を向けてしまいました。

 それがこれまで聞こえなくなっていた高座の様子だということと、鏡から目を背けてしまったことに同時に思い至りました。

 パニックを起こしそうになりながら、無理矢理もう一度首を鏡の方へ向けます。

 が、人形はいません。テーブルの上に目をやりますが、もちろんいるわけもない。

 瞬間、わたくしの耳の後ろ、このあたりを何かがすり抜けたような気配がいたしました。

 咄嗟に振り返りますと、

「師匠、木楽師匠がそろそろ終わられますよ」

 そんな言葉とともに楽屋の扉が開かれました。

 うちの弟子でした。見ると、唇は尖らせて、深い皺を眉間に寄せています。

 いくら時間に余裕のあるホール落語と申しましても、野放図に話しているわけにもまいりません。噺家も毎日の稼業ですから、このネタなら大体何分くらいだなっていう見当がついて時計を見る必要もありません。

 木楽さんももちろんそうで、ですから打ち合わせでタイムスケジュールが作られておりました。こちらもそれを承知しているはずなのに、そろそろ噺も結びに差し掛かろうとしてもわたくしが袖に姿を見せないものだから、弟子が焦って呼びにきたというわけだったんです。

 あの野郎うたた寝でもしてやがるんじゃないだろうな、とノックをするのも忘れて押し込んできたところで、楽屋の中で一人肩越しに自分の背中を見ようとしているようなおかしなポーズをとっているわたくしを目撃したという形になります。

「なにしてるんスか、師匠」

 驚いたような、あきれたような、その両方なような顔でそうたずねてきました。

「なにって、それは、ほら、あれだ……」

 けれども、わたくしだってどう答えていいかわかりません。言葉が渋滞して手振りばかりがわちゃわちゃと先行してまともに伝えられない状態でした。

「とにかく、もう来てくださいよ、すぐに師匠の出番なんですから」

 そう言って、弟子は扉を閉めて出ていこうとしたところで、

「ああっ!」

 なんとかそう金切り声をあげることができました。

「な、なんスか。気持ち悪い、悲鳴みたいな」

「いや、いい、いい、扉閉めなくて、いい。俺もすぐ行くから」

 訝しげにたずねてくるところを、わたくしも慌てて椅子から腰を浮かせました。

 密閉された楽屋で、またにされてはたまらないと、追いすがるようにして、弟子の後に廊下へ出て、ドアを閉めようと後ろ手にノブに伸ばしました。

 ところが、そうして握った手に返ってきた感触は、金属のドアノブとは似ても似つかぬ、妙にひんやりとした女性のものと思しい手なのでした。


 すんでのところで、喉元まで出かかった声を飲み込みました。それを聞きつけて先を行く弟子が振り返っても、わたくしが確認のためにドアへ振り向いてもよくない予感がしまして、そのままそっと指から力を放しますと、握っていた手らしきものの感覚も失せました。

 そうしてもうドアも知ったこっちゃなくそのままにして、舞台袖にまで到着しますと高座を終えて戻ってきた木楽さんに挨拶いたしまして、改めまして皆様の前にこうして座らせていただいた次第です。

 その間、わたくしは一度も背後の確認をしておりません。

 もしかしたら、もしかしたらですよ。楽屋からこの舞台まで、なにか背負ってきてしまったかもしれません。

 ですので、万一に備えまして、わたくしがこれから本題を話しております最中は、なにかおかしなもの、奇妙な現象などが見えたとしましても、決して高座から目を背けたりなさいませんようあらかじめ申し上げておきます。


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