推理小説の麒麟児が描く、珠玉のホワイダニット

 この作品は、犯人の動機に焦点を当てた、本格ミステリー小説です。

 作中で起きる事件の概要は、以下のようなものです。

 1969年三月、奥多摩で、証券会社に勤務する会津稔という41歳の男性が 路上で殺されているのを発見されます。

 稔には愛実という娘がいて、彼は彼女と二人暮らしだったようです。

 愛実は犯行時刻に、友人の樹里という子と福岡県へ旅行に行っていたみたいです。

 警視庁捜査一課の南條は、愛実が怪しいと考えていたのですが、そんな時に、透子という女の子が突然、「会津稔を殺したのは私です」と自首してきます。

 彼女は被害者とは何の接点もない子でした。

 しかも、動機について尋ねると、「今は言えません」と言って黙ってしまいます。

 それはどうしてなのか?

 彼女が犯人だとして、その動機はなんなのか……?

 読者はそのことについて、考えさせられることになります。

 推理小説で読者にフェアな作品を書くのって難しいと思うんですよ。
 正直、商業作品でも「いや、これは解けないだろ」って私は思っちゃうことがけっこうあります。

 しかし、この作品は解答編に至る前に、ちゃんと解けるようになっている。

 1970年前後くらいの時代の知識が多少必要ですが、推理に必要な材料は事前に全て提示されているので、誰でもちゃんと解くことができるようになっています。

 難易度も難しすぎず簡単すぎずで、ちょうどいい加減になっていると思います。

 作者はまだ大学生の方ですが、その若さでこれほどクオリティが高い本格ミステリー作品を書くのは、凄まじい才能というほかないです。

 皆さんも是非この作品を読んで、謎解きに挑戦してみてください。

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