第2話 魔術塔決戦

原子が核を回るように、体内に入り込んだ『カケラ』を制御していく。


くるくると一定の半径を保ちながら『カケラ』が回る。『カケラ』とは、精霊というか魂というか、名前がついていないので、『カケラ』と呼ぶことにする。


あえて名前をつけるとすれば、ローザミスティカなのだろう。トゲトゲした感じもちょうどイメージ通りだ。


『カケラ』の制御は、魔術戦における勝利条件と言っていいのではないかと推察している。


制御には30分ほどを要し、その間は戦線を離脱することになる。制御するまでの間、かなりの痛みが特に胸のあたりに伴う。ぐるぐると回る『カケラ』に応じて痛む感じだ。

決戦を行ったのは、東京駅にほど近いとあるオシャレスポットである。当時は魔術塔と呼んでいる人達がいた。精霊たちが勢力を挙げて集結し、対決していた。


魔術塔を後にする時、北に行くか南に行くか聞かれるのだ。


北はさらなる修行の道。


南は、魔術師を降りる道。


私は、南を選択した。


もう、この道に戻ってくることは、二度とできない。


門番が二人になった門から出ると、ターナーが描いたかと思うほどの霧だった。いや、霧というよりも、現実が揺れ、たゆたっていた。急いで渡る、大通りの横断歩道。その先は、別の国だった。


イメージとして近いのは、押井守監督の攻殻機動隊の映画の世界だろうか。ここから日本に帰れるのか、帰れるとしたら遠い旅路。そう、思った。


あの森の精霊は、今も居るのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生して帰ってきたので記録を記す @sabuya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画