あなたも、一緒に弓道部に入ろう

この作品を読んだあなたは、まず、ドミニクの可愛さに惹かれることでしょう。
彼女の快活なパワー、ほっこりとする挙動、いつでもブレないその芯。生き生きとした彼女の姿には、ずっと眺めていても飽きない『華』があります。

そんなドミニクを引き立ててくれるのが、主役の直人。
作中のほとんどは彼の三人称視点から描かれており、その悟り系男子っぷりが、ドミニクの可愛さを引き出してくれています。
いいぞ、もっとやれ。

そんなキャラクター小説として読んでも楽しめる内容になっていますが、もちろん主題を忘れるなかれ。
弓道という、対戦相手がいないスポーツ=自分との闘いである武道という題材も、作者が現役の経験者(弓道教室の講師!)であることから安心して読める内容になっています。
特に、第二章の4:で描かれる弓道シーンは圧巻の一言。
一連の作法はもちろんのこと、弓道用語を使わなくても弓道の『味』と『深み』をしっかりと表現するその巧さ。
読んだ人を、いつの間にか見学者の中の一人にしてしまうほどの臨場感でした。
そうして弓道の魅力を体感したあなたは、いつの間にか入部届けにサインをしていることでしょう。

作品に入り込ませる文章とはまさにこの事。
万人向けの描写で弓道をここまで深く描ける人は他にいません。別格です。
これに専門的な要素が加わったら、一体どれほどのモノになるのか…。そんな弓道の真髄が描かれる日が、今から楽しみです。


(レビュー更新2回目 2017/3/12)

その他のおすすめレビュー

和佐(大八郎 範遠)さんの他のおすすめレビュー6