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「くそ!最近モてると思ったらあのめぎつね、最初から細工にきづいていたなんて!」

アンドレアは含み笑いをしていた。

「アンドレア!お前にも心当たりがあったんじゃないのか!」


「いや?」


「姫はずっとオレのことをグレイプニルだと呼んでいたよ」


「王になれるチャンスを逃した!こんなつまらないことでな!」


グレイプニルは壁を蹴って悔しさをぶつけていた。

「なああんた、俺をなんだと思ってる?」

アンドレアは唐突に質問を投げかけた。

「昔オレのものは自分のものだって言ったよな」


「本当は何者なんだ、琥珀の剣に聞いてみろよ」


「俺が何者かだって?俺はただの詐欺師だよ!

貴族をちょちょっと騙して爵位をくすねて、

やっと手に入れた地位を使ってボランティア活動をやってな」


「書類屋やらと共謀してな、はははは!」


「この琥珀の剣は、強盗して奪ったものさ、

アンドレア、お前がやってきたことと何も変わらないだろう?」


「なるほどな、たしかに昔の俺そのものだ」


「俺が死ぬほど殺したい自分に」


アンドレアは笑いながら剣を抜いた。


「オレのものはオレのものだ」


アンドレアはしっかりと固まった殺意をグレイプニルにぶつけた。


「おまえが……俺を刺すなんて!?」


グレイプニルはその場に血を流して倒れた。


「どうしてお前を刺したのか、わかるか?」


グレイプニルは息も絶え絶えに助けてくれと言った。

すぐに兵が現れ、アンドレアをがんじがらめにし、アンドレアは逮捕されることとなった。


シュバイル国の刑は重い。

グレイプニルはふてぶてしくも息を吹き返し、

牢獄に繋がる道にソフィアが立って待っていた。

思わず駆け寄って話しかけた。


「アンドレア」


疲れた笑顔を見せ、無理してアンドレアは顔をソフィアの方向に向けた。


「あんた綺麗になったよな、グレイプニルに惚れていたからかな?」


「ありがとうアンドレア、私、お前が出てくるまで待ってます。ずっと」


シュバイル国の3年後の春、新しい王が、即位をし、シュバイル国に新しい時代が開けようとしていた。

人々は歓迎しているとは言えなかったが、立派な統治を行い、数百年の繁栄をもたらしたそうである。人々は王のことをこう呼んだ。

父殺しの王だと。

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その騎士が敵か味方かわからない 斉藤なっぱ @nappa3

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