第4話 羽化した神獣

「愉快、愉快!!!気分爽快じゃー!!」

私の声で誰か喋ってる?

「しっかし、暑くてかなわん。こんな物我には用無しじゃよ。」

電信柱の上に止まり、上着をあっさり脱いでいく、私。


「これも、これも、これも」

ぽいっ、ぽいっ、ぽいっと。

あれれ、私、何シテルの?

残るはブラとパンツのみ。

ブラのホックを外しかけたその時、


「ダメーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!」


やっと、声が出た。

町中に声が響き渡り、近隣の家に明かりが灯る。こんな姿、見られたくないの一心でその場から逃げ去った。頭の中で鳥の鳴き声が大音量で響き渡るが構っていられない。


行き着いた場所は、よく子供の頃に遊んだ公園。の、ジャングルジムのてっぺん。

下を見ると、工事中の看板が飾ってあり、ジャングルジムの高さ、三分の二がフェンスで隠されている。近年、公園の遊具の殆どが改良工事に当たっていてジャングルジムも地域によっては幼児が遊ぶには危ないという理由で撤去している。むしろ、今の私(達?)には絶好の隠れ家だった。


「お主、名は?」

と、口が勝手に喋る。

「これは、もうお主の体ではおらん!話そうが、動かそうが、脱ごうが、我の勝手じゃろう!!」

と、まだ喋る。


ようやく感覚が分かってきた。

思考を停止すると全てもう一人の自分に意識を持って行かれそうになるから、常に意識し、普段の二倍の力で動かせば私の体は、自由に出来る。と確信したことで、ようやく私の重い口が動いた。


「私の名前は小鳥遊 三羽。この体は、誰のものでもない、私のものです!!だから、だから、絶対に脱がないで下さい!!!」

やっと言えた。


「ほーお。お主、小鳥遊家の一族か。なら、容赦しなくても良いじゃろ。

一応名乗っておくよ、小娘。我が神体に選ばれたこと心から喜べ。」

急に意識が持っていかれる。

「我が名は飛鳥!!!鳳凰なり!!!!!!」

両手を垂直に伸ばし、仁王立ちする下着姿の露出狂が、ジャングルジムの上に立っていた。

あっ、私だ。


物凄い羞恥心に駆られたおかげで、飛鳥と名乗る者の制御を解きその場でうずくまった。

あー、もう、熱い。暑い。アツイ!!!

「お主、名を三羽と申したか?そんな罵詈雑言を頭の中で呟かれると流石の我でも泣くぞ。」

「仕方ないじゃない!あんな堂々とした露出狂、アンタくらいよ!!このド変態!!!!」

いつの間にか涙が止まらなかった。

どうして、こんな風になってしまったんだろ?

6時間前には決心がついてあんなにも晴れやかな気持ちだったのに。

一生こんな姿だったら……と、悩んでいたその時、頭の上から大量の水が降ってきた。


燃え盛る暑さが止んだと思った瞬間、体中が燃え盛った。人体発火。また意識を持っていかれる。

「誰じゃ。誰じゃ。誰じゃ。我に汚水を投げかけよってー!!!!!!!!!!!!!!!!」

飛鳥は、激怒していた。同じ体を共有する私にとって、その怒りは直接伝わってきた。

しかし、私の中では家族が救いに来てくれたのではないかと思ったらそうではなかった。


上を見上げると、ジャングルジムより大きな木の枝に制服姿の男が立っていた。

「俺に会うのは、初めてだよなー?鳳凰さん。」

にやりと笑う男は、躊躇なく木の枝からジャングルジムまでハイジャンプしてきた。至近距離1M。

「俺はお前を奪いに来たのさ。」と、

胸に手を伸ばす。のでなく、腕を1度引き直し俊敏に私の胸に腕を貫通させた。

そして、引き際に内蔵物を潰す感覚。

私の意識はそこでなくなったー。


目覚めると、ジャングルジムは燃えて原型が無い状態になっていて、私は地面に足をつけていた。

そして、目の前にあるのは、人の骨。

頭蓋後から足の骨にかけて一人分の骨。


貫通した部位は物の見事に元の形に戻っていた。

まだ、耳に残る炎の音。

しかし、何故だか心地よいのだー

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鳳凰学園 深津 夏凜 @natu86

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