妖怪叙事譚　飛べない天狗

　魑魅魍魎が跋扈する世界、妖蓮郷（ようれんきょう）。
　その中の一国、片翼の形をした翼律国（よくりつこく）は、天狗と人間がうまく共存した、比較的治安のよい国である。
　だが、その安寧は破られることとなる。
　いつからか、徳の高い妖怪の血肉を喰らえば、不老不死になれるだの、莫大な妖力を得られるだのと噂が広まり、力の強い妖怪たちが襲われるようになったのだ。
　天狗は、その筆頭だった。
　ある日、物見に出かけた天狗・凌幻（りょうげん）は、襲われていた人間の女・沙夜（さや）を助け出すが、そのときに負った怪我がもとで、空を飛べなくなってしまう。
　飛べない天狗は、死を待つほかない。
　しかし、天狗の中の天狗といわれるほどの力を持つ凌幻には、多くの味方がいた。
　欠けた翼を取り戻すため、凌幻の新たな闘い…続きを読む