世の中には「意味はよく分からないけれど通じる言葉」がたくさんあります。
例えば「粋」。この言葉の意味を明確に説明できる人間が果たしてどれほど存在するでしょうか。少なくとも僕は出来ません。海外の方に「What is "IKI"?」と尋ねられたら「あー、えーっと……ブレス!ブレス!エアーフロムマウス!」と言葉遊びで誤魔化す以外の術を持っていません。それによって日本人は自らの口臭に誇りを持っているという謎の誤解が発生したとしても。
本作で取り上げられている「ロック」も「粋」と同じように、僕の中では「意味はよく分からないけれど通じる言葉」に分類されます。なんとなくロックっぽいものを「ロックだね」と言っておけば通じる便利ワード。なので僕はロックとはこうあるべきだという決めつけは持っておらず、ロックが様々な事象を広く内包し得る寛容な言葉であることを理解していました。いや、理解しているつもりでした。
この作品を読むまでは。
作品の魅力を伝えるためのレビューで大変申し訳ありませんが、僕の脳はこの作品の中身を論理的に語る言葉を海馬に保存していません。「各都道府県の代表バンドが富士山麓の会場に集まって対バン形式で戦う大会の話」というあらすじ説明は可能ですが、この説明は間違えていないけれど致命的に間違えています。どういうことかは読めば分かります。そういう話の流れとかどうでも良いのです。大事なのは「ロック」。それだけ。この三文字以上にこの作品を説明し得る言葉はありません。
最初はあまりのぶっとびぶりに「ロックってこういうものじゃねーから!」と思う方もいるかもしれません。僕がそうでした。しかし話を読み進め、全裸の幼女が、熊が、光り輝く大仏が巻き起こす狂演の熱に浮かされるうちに考えを改めることでしょう。「ああ、俺はなんてロックじゃねえことを考えちまったんだ」と。そうなった時にはもう貴方はこの作品の虜。この世のあらゆる森羅万象を内包し得るほどに広がったロックな世界から抜け出せなくなっているはずです。
唯一の欠点は4月で更新が止まっていることです。もっとも各話がすさまじく濃いので途中まででも十分に楽しめます。是非、ご一読下さい。
面白いです。とにかく文章全体が野生的なパワーに溢れていて、「これがロックだ!」と言われると「そうか、これがロックだったのか!」と思わず納得しそうになります。
女子小学生の全裸がロックであることは言うに及びませんが、同時に女子高生の全裸がロックであることも揺るがぬ事実です。本小説はこの「全裸=ロック」に代表されるような自明の理を随所に挟むことにより、それ以外のカオスな部分にまで説得力を持たせるという極めて高度な手法で読者の精神を蝕んで来ます。
文句無しに万人にお勧めできる傑作です。特に、ハーブか何かの代用品として一日一読することに適しています。
笑いっぱなしでした。とにかく全要素がクレイジー!
冒頭からして女子小学生がロックな真似をしでかしており、劇中のイベント、ひいてはこの作品が真に何でもありだということを魂で理解させられます。その上で続々と登場するトチ狂ったキャラクターの数々! 一体どうやってこれほど個性的極まる面々を単一の頭脳から生み出せるのか、そして躍動感たっぷりに描けるのか、発想力に脱帽せずにはおれません。
それでいてただ読者を弄ぶだけではない、物語としても面白い! 確かな地盤たる全体の流れがあり、説得力があり、続きが気になる。凄まじいことです。一気に読んでしまいました。