エピローグ

 副官と従者長は揃ってユーリー・ヴラド・ヘルトシュバイツの前に伺候しこうしていた。

猟犬ファウンドは帰らぬのか?」とヘルトシュバイツは開口一番、従者のことではなく、猟犬の安否を尋ねた。例の天使をひそかに付けさせた猟犬が帰って来ないとの報告を受けているところである。

「はっ、森の外周部にて土地の沈み込みを確認いたしました。谷となっておりまして底へ降りていくのが難しく。おそらくそこに落ちたくわれたのではないかと。また沼沢地の近くの街レッグハルトまで馬を飛ばして情報収集しましたが、そんな一行は見たことないとのことでした。」と副官はそう答えた。

「そうか、狩りに支障無きように猟犬を補充せよ。」と一言だけ述べて手を振って下がるように命じた。

従者長は自分の直接の部下レーベンが帰還していないことをとがめられるのではないかと恐れていたが、従者のじの字も出なかったので天幕の外で安堵のため息を吐いた。

レーベン・ポワティエの実家には、死亡通知といくばくかの金を送らなければならない。慈悲深いユーリー・ヴラド・ヘルトシュバイツしゅじんを領民に印象付けておくことも部下の務めである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

飛天記~ある天使たちの物語~ 一ノ口九点(いちのぐちきゅうてん) @Ichinoguchi9ten

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ