そして少女は成長する

本作品は殺人事件を通じて成長する少女の話である。ミステリーとしての大枠はよく見るタイプの作品であり、また少女が成長するというのもありきたりな話ではあるが、両方のバランスがとてもよく、少女と事件が組紐のように絡まり合う設計の巧みさが読者を引き込んでいく。
さらにこの作品のもう1つ優れた部分として、舞台が緻密に描写されているところをあげたい。SFやファンタジー的なわざとらしさを大胆にそぎ落とし、舞台の中に自然にキャラクターを配置し、話に落ち着きを与えているところが個人的に好みだった。若い人に向けた作品ではあるが、大人の雰囲気も感じさせており、厚みのある作品に仕上がっていると思う。
文体にはやや癖があり、そこだけは気にかかった。もうすこしこなれた筆致になれば、多くの読者を引き込めるかと思う。

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