途轍もなく丁寧な描写力。瑞々しさと活力に溢れた冒険譚!

まず本作を一言で表すならば『途轍もなく丁寧に描かれた冒険譚』ということでしょう。ここで言う丁寧というのは、登場人物達が訪れる場所やシーンに必要な情報を、簡潔かつ必要十分な情報量で、余すことなく読者に伝えきっている。という意味です。

余程事前に考えて執筆しない限り、それぞれのシーンでの情報量には必ず偏りが出ると自分は思っていました。しかし本作は、その情報量が冗長になることもなく、かといって不足しているわけでもない。描写と情報は常に必要なだけ提供され、かつ、それによってそのシーンの光景をありありと読者の脳裏に想起させるという、かなり高等な執筆技術を持っていると感じました。

これら丁寧な執筆技術と描写力によって描き出される世界観は、当然瑞々しく、登場人物達もみな生き生きと、活力に溢れています。

この世界に『実質死んでいるキャラクター』は存在せず、皆物語の中で必要とされ、生きるべくして生きているキャラクターばかりです。これもまた凄い。これだけの超長編ですから、ただとりあえず出しただけの登場人物が多数出てきても誰も責めはしないと思うのですが、本作にはそういったキャラクターが全く存在しないのです。

とにかくまずは読んで頂きたい。本作は冒険ファンタジーのお手本、教科書とも言えるような部分が多数あり、まずどうやって小説を書いたら良いかわからないというような方にも、絶大な自信をもってお勧めできます。

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