まるで宮崎アニメみたい! 王道ファンタジー好きのための良作

異世界ファンタジーが好きです。
知らない世界を見せてくれるから。
行ったことのない世界に(空想の中で)行けるから。

だから、ネットでも紙媒体でもファンタジーをよく読みます。

でも、最近なんか違うな、というものが増えてきました。
特に流行の(なんだと思います)異世界チートものは、面白さのポイントが王道ファンタジーとは違うような気がします。
あれはあれで面白いんですけど。
ファンタジーが読みたい!という気分で読むのとは違うな、と。

で、この作品。
読んで驚きました。
ページを開くと、いきなり馬上槍試合をしている。おおーっと思いました。中世イギリスの感じがして、ワクワクします。

この作者さんはうまいです。
多分、文章の運動神経(って変な言い方ですけど)がいいんだと思います。
カメラが引いたり、寄ったり、音声のボリュームが上がったり、下がったり、というバランスのつけかたが上手いんです。

で、大迫力の試合があった後、主人公にカメラが寄ります。
1話目のラスト、主人公がつぶやくセリフがこの話のテーマを表わします。主人公は「モットー=誇り」を探しているのです。

その後、魅力的な姫君が登場し(定番だけど、嬉しい展開!)、主人公は「誇り」を手にするため、遍歴の旅に出ることになります(これまた嬉しい展開!)。

主人公の行く先には、いろんなキャラクターや町が現れます。地名や人名はイギリスを下敷きにしているようですが、人間に混じって獣人が棲息していたりして、うまい具合に「ファンタジー英国」を作りあげています。
いいなあ、こういうの。
しっかり地に足の着いた異世界。生活感があるのに、見たことのない感じ。
宮崎駿監督のアニメにちょっと近い気がしました。

物語はまだまだ続きそうですが、きっとこの作者さんなら主人公に過酷な運命を味わわせた後で、見事に物語を着地させてくれるだろうと思います。
安心感がある小説。
どこかへ連れていってくれそうな小説。
身を委ねたくなる小説。

本当に面白いです。おすすめです。

その他のおすすめレビュー