私は青年の頃、吉川英治先生の三国志、司馬遼太郎先生の項羽と劉邦に熱中しました。この作品の中で陸賈の述懐を通じて筆者の考えを投影していく手法なんかは、両著書にソックリだと思いました。良い意味で古風な作風です。その点、北方謙三先生の揚家将シリーズのような、余計な注釈は背景説明に止めるドラマ的な描写とは微妙に違います。私はどちらも好きです。
また、歴史小説に馴染みのない方でも、「銀河英雄伝説」のヤン・ウェンリーが好きならば、この作品にのめり込むと思います。
歴史小説は、史実というタガの中で物語を紡ぐので、それ以外の小説より難しいと思います。そういう制約の中で、私も水谷さんと同意見ですが、テムジンや魏蘭というキャラを創造してストーリー展開させる技量は凄いと思います。
ですが、カクヨムは読み専不足の状態らしいので、約40万字の大作の閲覧数は伸び悩むでしょう。書き手の皆さんは、気分転換を兼ねて短編メインで読みますから。それが少し残念です。まさに、韓信が時代に愛されなかったのと同じ構図。小説家になろうでは閲覧数が増えているのでしょうか?私はモノグサでカクヨム以外には行ってないので...。