概要
月に一度、一泊だけ。黙って家を出る。誰も訊かない。
「今月は、どこに行くの」
一年待った質問なのに、わたしは答えられなかった。
宮下真穂、四十九歳。長野県松本市。小学校の給食調理員のパート。
毎日五百四十一人分の昼ごはんを作り、家では二人分の弁当と三人分の夕飯を作る。
給食室の壁に貼られた一年分の献立表には、空白の日が一日もない。
検診の再検査に、誰にも付き添いを頼めず一人で行った。結果は白だった。
その帰り道、駅前のベンチに三時間座った。誰からも連絡は来なかった。
家に帰っても「今日、どこか行ってた?」とすら訊かれなかった。
その夜、真穂は手帳の隅に五行だけ書いた。
一、月に一度、一泊だけ。
二、行き先は言わない。
三、嘘はつかない。訊かれたら、答える。
四、家のことは全部済ませてから出る。
五、必ず帰る。
歩いて二十
一年待った質問なのに、わたしは答えられなかった。
宮下真穂、四十九歳。長野県松本市。小学校の給食調理員のパート。
毎日五百四十一人分の昼ごはんを作り、家では二人分の弁当と三人分の夕飯を作る。
給食室の壁に貼られた一年分の献立表には、空白の日が一日もない。
検診の再検査に、誰にも付き添いを頼めず一人で行った。結果は白だった。
その帰り道、駅前のベンチに三時間座った。誰からも連絡は来なかった。
家に帰っても「今日、どこか行ってた?」とすら訊かれなかった。
その夜、真穂は手帳の隅に五行だけ書いた。
一、月に一度、一泊だけ。
二、行き先は言わない。
三、嘘はつかない。訊かれたら、答える。
四、家のことは全部済ませてから出る。
五、必ず帰る。
歩いて二十
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