概要
白薔薇の聖女リリアは、祈りによって枯れた畑に麦を芽吹かせ、濁った井戸に苔を戻し、人々を飢えから救っていた。
だが、村人が奇跡を祝う夜、その畑では血を吸う赤蔦が目覚める。
聖女の祈りは、土地に眠る危険な植物まで起こしてしまう。
その事実を隠し、奇跡の後始末をするのが、無愛想な聖女付き庭師ノアの仕事だった。
リリアは、自分の祈りが何を生んでいるのか知らない。ノアは彼女を守るため、真実を知らせない。そして植物化が進めば、自らの手で彼女を刈る任務まで負っていた。
そんな中、若い部下が禁じられた種を持ち出したことで、奇跡の代償が都市の温室へ根を伸ばし始める。
聖女を守るためなら、聖女本人に真実を隠してもよいのか。
奇跡を咲かせる聖女と、その代償を刈る庭師の巡礼が始まる。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!華やかな聖女の巡礼の裏で、誰にも知られない仕事をする庭師。
聖女が奇跡を起こして人々を救う――だけでは終わらず、その“奇跡の後始末”をする庭師がいる、という設定がかなり良いですね⭐️
主人公は、聖女の祈りを支える立場なんですが、ただ付き添っているわけではなく、土や水、植物の状態を見て「どこまでなら救えるのか」を冷静に判断していきます。善意だけではどうにもならない現実を、庭師が引き受けている感じがありますd( ̄  ̄)
リリアの、できるだけ多くの人を救いたいという気持ちと、ノアの現実的な判断も、どちらかが間違っているわけではない。だから二人のやり取りにも単純な正解がなくて、奇跡って何だろう、救うってどこまでなんだろう、と考えさせられます。
派手な勇…続きを読む - ★★★ Excellent!!!知の原罪を問い、無垢とは何かを問う重厚な物語
聖女が畑になす奇跡、それは、実りだけでなく、副作用としてわざわいも招くものであった。ただ、それにまつわる知を庭師は己の内に留め置き、聖女を無垢に保つ。
知が人類を発展させた。これは疑う必要も無いことである。ただ、同時に知が人類を幸せにしたかと問うとき、果たして、我々は同じ答えをなしえるであろうか。
ひるがえって、知こそが人類を汚す。それゆえ、それを排除し、無垢に留まれば良い。果たして、それは正しいのか?
これは古くからある人類にとっての普遍的な課題である。そして、未だ我々も答えを知らない。本作がいかなる答えを提示してくれるのか、楽しみである。 - ★★★ Excellent!!!奇跡の裏側を描くシビアな世界観
第一章まで拝読しました。
この世界の「庭師」は綺麗な庭園を管理する仕事ではなく、実りを導く「聖女」の祈りがきちんと奇跡として人々に届くように、対象地を整えたり問題を解決したりする非常に危険な仕事です。
作品世界の過酷さがとても丁寧に描かれており、第一章からいきなり「作物を芽吹かせる聖女の奇跡があってもそう都合よく問題が解決しない」という重い事態が発生します。
驚くべきは、独特な世界観でありながら、「読者に向けた独自設定の説明」みたいなものがほとんどないことです。
この世界の常識において起きている出来事やそれに対する人々の反応の描写だけで、読者には何が起きているのかが伝わるようになってい…続きを読む