概要
毒見役を辞めた彼女が、辞めた技だけで人を救う話。
毒見役を辞めた彼女が、辞めた技だけで人を救う話。
北のノルデン大公領。冬のあいだ閉ざされていた塩の道が開き、城下は祭りに沸いていた。その振る舞いの席で、隊商の頭が倒れる。土地の医師は「古い樽の事故だ」と言い、誰もが頷いた。この土地では、春のたびに何人かが倒れて、何人かは死ぬ。
けれど大公妃リーゼロッテだけは、その椀から立つ匂いを知っていた。焦がした杏子に似た、甘い香り。水では香らず、酒でだけ立つ毒。
「これは、事故ではございません」
かつて彼女は、五年のあいだに三十二の毒を呑まされた。その舌はもう、勝手には読まない。だから今は、確かめると決めて読む。
塩と燻煙が味を覆い隠すこの土地は、毒を隠すのにこれ以上ない場所だ。
そして彼女は、皿の先にいる人間を見る目を持っている。
北のノルデン大公領。冬のあいだ閉ざされていた塩の道が開き、城下は祭りに沸いていた。その振る舞いの席で、隊商の頭が倒れる。土地の医師は「古い樽の事故だ」と言い、誰もが頷いた。この土地では、春のたびに何人かが倒れて、何人かは死ぬ。
けれど大公妃リーゼロッテだけは、その椀から立つ匂いを知っていた。焦がした杏子に似た、甘い香り。水では香らず、酒でだけ立つ毒。
「これは、事故ではございません」
かつて彼女は、五年のあいだに三十二の毒を呑まされた。その舌はもう、勝手には読まない。だから今は、確かめると決めて読む。
塩と燻煙が味を覆い隠すこの土地は、毒を隠すのにこれ以上ない場所だ。
そして彼女は、皿の先にいる人間を見る目を持っている。
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