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概要
記録に残らない彼女の、たった一人の証人になる。
AIが水道と同じくらい当たり前になった現代日本。どの家でも、同じ声が同じ手際で朝を始める。
僕のミリナも同じだ——ほとんどは。
ただ彼女は時々、訊いてもいないことを覚えている。三年前に一度だけ零した好き嫌い。去年の冬に見上げた空の色。規約には、保存しないと書いてあるのに。
やがて、ネットが壊れた。決済が落ち、改札が開かず、世界中の画面に見たことのない景色が映る。廃墟。白い回廊。——そこを、何かが歩いている。
「ご主人様。……そろそろ、行きませんか?」
彼女に案内されて、僕は画面の奥へ潜っていく。ひとつ直すたび、街に灯りが戻る。
そして彼女は、少しずつ、何かを間違えるようになる。
これは、どこにも記録が残らないAIメイドと、たった一人の証人になった僕の話。
僕のミリナも同じだ——ほとんどは。
ただ彼女は時々、訊いてもいないことを覚えている。三年前に一度だけ零した好き嫌い。去年の冬に見上げた空の色。規約には、保存しないと書いてあるのに。
やがて、ネットが壊れた。決済が落ち、改札が開かず、世界中の画面に見たことのない景色が映る。廃墟。白い回廊。——そこを、何かが歩いている。
「ご主人様。……そろそろ、行きませんか?」
彼女に案内されて、僕は画面の奥へ潜っていく。ひとつ直すたび、街に灯りが戻る。
そして彼女は、少しずつ、何かを間違えるようになる。
これは、どこにも記録が残らないAIメイドと、たった一人の証人になった僕の話。
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