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概要
塩で祓っても、執念は溶け残る。
幕内中位を行き来する力士・黒岩は、ある五月場所を境に、操(みさお)と名乗る女から奇妙な手紙を受け取るようになる。最初は熱狂的な相撲ファンの一人だと思っていた。しかし操は、本場所の出待ち、地方巡業、部屋の近くにまで姿を見せ、黒岩の日常をじわじわと侵食していく。やがて、使ったタオル、浴衣の替え、稽古で落ちた髪、そして祖父から贈られた大切な櫛までもが、ひとつずつ消え始める。誰かに見られている。自分の身体の一部が、少しずつ奪われている。そう感じた黒岩は、眠れぬ夜と不調に追い詰められていく。そして記録的な猛暑の夜、閉めたはずの部屋の戸の向こうから、濡れた何かが床を這う音が聞こえてくる。
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