概要
そこでは香が、人を癒やし、穢れを鎮め、呪となり、時に心や政をも動かしていた。
香を色や流れとして“見る”ことができる澪は、身元の知れない異物として宮の外れに置かれる。
やがて香務局の仕事を手伝うようになり、人々の香に潜む違和感を追ううちに、香煙の向こうに隠された宮中の異変を辿っていく。
帰る場所も、生きる場所も曖昧だった少女が、香を頼りに人と関わり、自分の居場所を見つけていく宮廷幻想物語。
※本作に登場する香材・薬材、その効能や調合法には創作を含み、実際とは異なる場合があります。
設定資料:
https://kakuyomu.jp/works/2912051603096601315
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!アロマは焚かずとも、この一作で十分です!
ある日突然、女子高校生が香りに特別な力がある異世界の宮廷に迷い込むことから始まる和風ファンタジーです。
作者はとても優れた文章力をお持ちで、安心して読むことができます。
それなのに、香りが見える、香りを整える……。
難しい言葉をほとんど使用せず、香りが揺らぐほどに柔らかな文体。
言葉の組み合わせがなんとも独創的かつ絶妙で、小説を読みながら、詩を読んでいる気分にも浸ってしまいます。
私は普段わりとアロマを焚く方ですが、様々な香りが立ち込めるこの作品を読み始めてから焚くのを忘れるようになりました(笑)
鼻腔をくすぐられ、気づけば年甲斐もなく十代の不安定な少女の気持ちにシンクロしていて、彼女…続きを読む - ★★★ Excellent!!!香りの向こうで、少女は居場所を見つけていく
香りが見える少女・澪が、香が特別な力を持つ異世界の宮廷へ迷い込む和風ファンタジー。
この作品の魅力は、何より「香り」を物語の中心に置いているところだと思います。
白檀、沈香、麝香、灰、水、煙。
これらが雰囲気を出すための小道具ではなく、香りそのものが、人の心、体調、穢れ、記録、宮廷の異変と結びついています。
宮廷ものとしての美しさと共に、香務局の仕事、灰の処理、香材の管理、帳簿や記録といった実務描写があって、世界がふわっとした幻想だけでないのも良い点。
派手な戦闘や急展開よりも、静謐で、繊細で、どこか水音のするような宮廷幻想譚です。
一言で申し上げるなら、その題名の短さも相まって…続きを読む - ★★★ Excellent!!!五感で味わう美しい宮廷世界
女子高生の澪は、祖母から受け継いだ香炉をきっかけに、不思議な香りと煙の向こうに存在する異世界へ迷い込みます。
そこは、香や水、星の流れが特別な意味を持つ宮廷「月下皇宮」。
序盤から「香り」を軸にした独自の世界観が描かれ、一気に引き込まれました。
白檀、沈香、麝香と様々な香りが漂い、自分の嗅覚が文章に刺激されているような感覚があります。
月下皇宮の描写も美しく、静かで神秘的な空間に、作者様ならではの上質な世界観を味わうことができます。
なにより、人付き合いがあまり得意ではない澪の人柄が魅力的で、読みながら自然と寄り添いたい気持ちになりました。
ファンタジーやミステリー要素もあり、多…続きを読む