概要
兼好にはなれなかった男は、僧の鼻毛まで書き残した。
藤原宗春は、兼好法師の草に憧れ、随筆を書き始めた。
花、月、老い、死、無常。
それらしいものを書けば、いつか自分も兼好のようになれると思っていた。
だが、宗春の筆は、どうしても美しいものへ向かわなかった。
葬送の場で形見を数える指。
説法中に菓子へ流れる僧の目。
品を重んじる者の腹の音。
死を前にしても気になってしまう、見舞いの僧の鼻毛。
上品にはなれなかった。
けれど、そこにも確かに人間がいた。
やがて宗春は「放屁庵俗丸」と号し、己の俗を受け入れる。
その草は人々に密かに読まれ、笑われ、隠され、けれど誰にも正面から褒められることはなかった。
そして時は流れ、明暦の大火。
江戸の古書肆に残っていた一冊の写本『俗丸草』も、火に呑まれていく。
これは、兼好にはなれなかった男と、残らなかった随筆の物語。
花、月、老い、死、無常。
それらしいものを書けば、いつか自分も兼好のようになれると思っていた。
だが、宗春の筆は、どうしても美しいものへ向かわなかった。
葬送の場で形見を数える指。
説法中に菓子へ流れる僧の目。
品を重んじる者の腹の音。
死を前にしても気になってしまう、見舞いの僧の鼻毛。
上品にはなれなかった。
けれど、そこにも確かに人間がいた。
やがて宗春は「放屁庵俗丸」と号し、己の俗を受け入れる。
その草は人々に密かに読まれ、笑われ、隠され、けれど誰にも正面から褒められることはなかった。
そして時は流れ、明暦の大火。
江戸の古書肆に残っていた一冊の写本『俗丸草』も、火に呑まれていく。
これは、兼好にはなれなかった男と、残らなかった随筆の物語。
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