山里の記憶に潜む、狐火と絆の幻想的な風景

郷愁を帯びた素晴らしい作品でした。
冒頭から田舎の風景や家族の関わりが丁寧に描かれ、読者は自然と物語に没入してしまいました。

特に、蝉の声や林の薄暗さ、草木の匂いなど五感に訴える描写が鮮やかで、祖母の幼い恐怖や不安が手に取るように伝わります。

狐の嫁入りの場面では一気に怪異譚へと転じ、静謐な行列と黒い靄の描写が圧巻でした。ゴンの勇敢さと最期の余韻が深い哀しみを伴いながらも不思議な救済を感じさせ、伝承と家族の物語が交錯しています。

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