第8話 調査


「調査とは、地道に一歩ずつ歩んでいくものである。

ヘスさんからの教えです。」

「喫茶店なんだよね?」

「喫茶店です。」

苦しい言い訳ながらも、その言葉にアサは頷いて事なきを得る。

時期も時期だからか、人通りは少ない商店街の様相。

とにかく暑い。突き刺すような日差しに、私も翠も参ってしまう。

ふと、アサに目を移す。

スラッとした背丈に白いワンピースはその年齢にはそぐわない格好かもしれないが、彼女の美麗さがその全てを包み込んでいる。寧ろ目を惹く魔性すら感じられた。あぁよく見てみれば汗もかいて居ない。一体どうなっているのだろうか。サラサラとした肌を眺めていると、その視線に気付いたのかアサはこちらを向いて首を傾げた。

「何、欲情した?胸触る?」

こう言う所が無ければなぁ。

だから高校では”惨美人”と揶揄されていたのだ。

もったいない。

「触りませんよそんな脂肪の塊。戦闘時には邪魔でしかないですし。」

「喫茶店で働いてるんだよな?」

「喫茶店です。」

段々誤魔化しも面倒になってきたので適当にあしらうが、翠も頷いていたしまぁ詮索はしないだろう。

商店街を抜けて数十分、周りより一段と大きなその建物が、今の私達の目的地。

「”明日馬病院”。」

アサの一族が経営している、この周りで最も大きな病院である。

ここに来たのは言うまでもない。

翠の弟が入院…と言う名の隔離をされているのだ。

なんでも、先週バイクの事故で横転して搬送されたものの、精神に不安であるとして治療と同時に隔離されたのだとか。

アサの口添えで病室に入り、ベッドの上に横たわる一人の男を見下ろす。

金髪にピアス、タトゥーは……シールか。

「ゴリゴリのヤンキーですね。」

「そうだね。私も近づかない方が良いって言われちゃった。」

が横目で見た部屋の入口の方を追えば、貞淑そうな看護師がこちらに一礼する。

……あの看護師ですか。とても綺麗な方ですが、いくつくらいなんでしょうか。

「人の弟に散々な言い様だな。

まぁ馬鹿な弟だから仕方ねぇけどさぁ。」

ハッハッハと笑う三人のボロクソな評価に意識は無いながらも顔を歪ませる弟君を、三人は鼻で笑って捜査を開始する。

「持ち物は?」

「腕時計と手帳、財布だけだ。中身も検閲済み。不審な点は無し。」

そう言って一つずつ投げ渡してくるが、証拠品はもう少し丁重に扱って欲しいものだ。

「プロファイリングは?」

「弟だぞ?してない訳が無い。」

「でも最近は精神的に不安定だったんでしょ?人格に影響あるよね?」

「あぁ。だから今やる。」

そう言って翠は目を見開いて横たわる全身を頭から爪先まで吟味する。

……久しぶりに見ましたが、相変わらずの集中力ですね。

___翠は特異体質だ。

相手が感じる事や、考えていること、そういったものを理解して模倣してしまうのだという。

この体質を知っていたお陰で、猿薙の能力を看破する事が出来たと言っても過言では無い。

お陰、と言ってもその原理は別種だ。

猿薙は行動を見て学習し、高水準でその動きを模倣する。

翠は外見や肉体の情報から精神状態までもを模倣する。

人間ではあるが、本質的には翠の方が超能力じみている。

……特異体質は、メリットも大きければデメリットも大きい。翠は拒絶されるのを恐れて人付き合いが苦手になってしまっただけでなく、他者との意識の混濁や痛覚の共有による苦痛も生じて相当苦しんだらしい。

幼少期には能力の制御が出来ず、それはもう地獄だったと聞いた。

今は制御も可能になって、それを長所に刑事として日々励んでいる。

本当に、努力家な奴だ。

翠は瞳を閉じながら、脳内に浮かんでいる散らばった情報を組み立てていく。

翠の無事を確認したいところだが、集中してると返されるのは目に見えるため、黙る。

「…………はぁ、疲れた〜。」

備え付きの椅子に腰掛け、翠は酷使した脳を休める。

「お疲れ様です、翠。」

「お疲れ。」

「おー、サンキュー。」

手渡した水を直ぐに飲み干して、翠はにへらと笑う。

「……で、いい話と悪い話、どっちから聞きたい?」

「「いい話で。」」

「へいへい。

……精神状態の解析が完了した。かなり色が多かったが、根元を見ればシンプルだ。

”黒”、あの色が示すのは殺意。他者を害し、命を奪う事を目的としている。幸いな事にまだ人を殺しては無いが。」

「……いずれやると?」

「あぁ。目が覚めたら、目に付いた奴を殺そうとするだろうな。」

彼女の腕に目をやると、左腕を必死に右手で抑えている。

弟の様子が分かって恐怖しているのか、はたまたその殺意が伝播したか。

どちらにせよ、翠が正常な状態でないのは見て取れた。

「悪い話は?」

「……その殺意の原因が分かんねぇ。

私がやれるのは、”今”の精神状態から遡って”過去”を見る事だ。

悲しみ、怒り、疑念。そういった感情の延長線で殺意が発現したなら理解できるが、コイツの場合は平穏な状態からの急変だ。

正味よく分からん。」

急に殺意を抱く……

それに違和感を感じながら、夜音は顎に手をやる。

窓の外の木から、新緑の葉が落ちる。

______


「で、ここが弟の部屋。」

捜査続行という事で、先ずは何かありそうな自室へと赴いて来た訳だが……

「……意外だね。

反抗期の高校生の部屋は、総じて荒れてるものだと思っていたけど。

全然綺麗。」

確かに、部屋には一つのゴミも落ちていないし綺麗に整理整頓されている。

だが、これは綺麗と言うより……

「やっぱりな、何もねぇ。

あんなにあった漫画やらゲームやらも、全部捨てたなこりゃ。」

それだけでない。

趣味のものどころか、ゴミ箱もカーテンもベッドも、何もかもが無かった。

凡そ、人が過ごすには快適ではない空間。

それが不気味であった。

「と言うより翠、知ってたんですか?」

「新作のマンガ買ってないかどうか定期的にチェックしてたからな。

前に急に漫画の量が減ったと思ったらこれかよ。」

まぁ一応、それも手掛かりにはなりますか。

だが、家具が無い以上探す場所もないので、部屋の中をなんとなく見回して違和感がないかどうかを探す。

ふっと視界の端に白い装束を見た気がして振り返ると、ツクヨミが部屋の隅の床を凝視しているのを見つける。

なんか猫みたいですねと笑いかけたが、生憎2人がいるので口を噤む。

一応ツクヨミが見ているものを確認しようと部屋の隅に寄って、床を見る。

「……ッ!!」

夜音はそれを目視すると咄嗟に後退りして警戒心を引き上げ、周囲に何もいないのか再度見回して確認する。

「なんかあったか?」

「どうしたの……?」

その様子に疑問を抱いたのか、二人がこちらに近付いて床を見る。

「ん?なんも無いじゃねぇか。」

「虫でも居た?」

「い、や。何でもないですよ。見間違えただけです。」

そう言って誤魔化すが、二人は少し怪訝に思ったようで首を傾げながらその場所から離れた。

一方の夜音はもう一度その隅を凝視する。

二人には見えないソレは、ならば神秘に他ならない。

腹を裂かれた雀の死体が、白い蟲のようなものに食い破られるその様。

__醜悪。

その一言に尽きる光景であった。

神秘に臭い等無いはずなのに、鼻腔に腐臭がツンと来る。

雀の周囲に散らばった肉や臓器がその周りを赤黒く彩る光景は、その惨さを物語っていた。

それが食に繋がる行動であったなら、そんな事は有り得ない。

しかし眼前の光景には飽食しているかのように食い散らかされていた。

何故か。

「明確な、悪意。」

その一言に他ならなかった。


30分後


特に収穫もなく、一度夜音宅へと帰ろうかと言う運びとなる。

帰りにコンビニに寄ってアイスと飲み物を買い揃えセミの鳴き声振る地面。

来た道を帰るその道中、夜音は一人猛烈に思考を巡らせていた。

あの雀。

何かに食い破られていましたがあれは一体……

翠とアサには見えない事から神秘関連である事は分かりますが、寄生虫……なんでしょうか。

様々な憶測が飛んでは消え、飛んでは消えて夜音は息を吐く。

「ほら翠、アイス溶けちゃうよ。」

「お、サンキュー。」

……一度、店に相談しよう。

影響が出ている以上、このままだと弟君も、何れ翠も危険である事に変わりは無い。

「なら、善は急げです。」

「「?」」

夜音は早速店に電話を掛け、暫し待つ。

今か今かと待っていたが、コール音は鳴り止まず。

最後に伝えられたのは、機械的な留守番電話の催促である。

「あ。」

そう言えば、今週はヘスさんとカロンさんは出張で店閉めるって言ってましたね……

この時間だとまだ仕事中でしょうし。

ヘスさんには一度夜に掛け直すとしよう。

だがそうなると、今頼れるのは自動的にあの人しか居なくなる。

最近登録したその番号に掛け、数コールの後その人物からの尋ねが聞こえる。

「ハイハイ〜、夜音ちゃんどしたの?実家帰るって言ってたけどなんかあった?」

「七さん今暇ですか?もし時間があれば相談したい事があって……」

「……ゆっくりで良い、詳しく教えてくれ。」

七は真面目な相談だと分かるや否や、直ぐに態度を入れ替えてモードを変える。

疲れないんですかね、本当。

「実はかくかくしかじかで……」

できるだけ客観的に調べたこと、あった事を伝え、それに自分の主観の推理も付け足す。

七は話を聞き終えると数瞬黙り込んだが、それで充分だったようで真面目トーンのまま返答する。

「……部屋を見るまでの情報だったら霊でもおかしくなかったんだが。

”蟲”と来るか。

また厄介な奴に関わっちゃってまぁ……」

「あの、”蟲”って言うのは……」

「ん?あぁ。ヘスさんの座学ではまだ扱ってないのね。

蟲っていうのは山の怪の使者とか媒介者って呼ばれる存在で、山から生まれた存在。

大方は宿主の栄養を吸いながら、最終的には食い破って殺すのが普通かなぁ。

生物に寄生するものもいれば神秘に寄生する種も居る。

今回は前者だろうけど……」

七はそこで言葉を切って何か考えた様だったが、すぐ「いや」と否定の言葉を吐く。

「夜音ちゃん、取り敢えずそっち行っても良い?」

「え?今からですか?」

「うん。本来なら専門家のヘスさん案件なんだけど出張で忙しいだろうし。蟲案件は知識無いと無理ゲーだからねぇ。その友達の弟君の診察もしたい。

荒れてる人の診察するなら、俺の鎖が効果的だしさ。」

確かに。

七さんが居ればかなり心強いし、デメリットが無さすぎる。

「じゃあお願いします。

住所、送っときますね。

あ、そうだ。家泊まります?

宿泊代とか申し訳ないですし……」

「……流石に近くの宿取るよ。

それじゃ、着いたら連絡するから。

また後で。」

そう電話を終了させてなんとか問題解決の目処がたつ。

電話が終わったのを待っていた須磨が私の頬に飲み物を押し当て、その冷たさに驚いて顔を逸らす。

「…お疲れ。前に言ってたヘスさんって人?」

「違います。七さんって言う別の先輩の方です。」

「そっか。相談乗ってくれた?」

「はい。どうやら手伝ってくれるらしくて。」

「優しい人だね。」

「ふふっ、そうなんですよ。

……あれ、翠はどうしました?」

「暑いからって、先に夜音の家行ってエアコン付けに行ったよ、走って。」

アサの緩んだ呆れた表情を見ながら、昔の彼女を思い出す。

そうでした、彼女はこう笑うんでしたね。

……あれ。なんで忘れていたんでしょう私は。

アサの笑顔、凄く好きだったのに。

私からの視線に気付いたのか、アサは直ぐに元の無機質な顔に戻ってしまう。

そうして、思い出す。

最後に彼女の笑顔を見たのは確か、母が死んだ前の日の……

「__アサ。」

「ん、なに?」

夕陽に照らされた彼女の黒髪の艶が、一層輝いて見えた。

「………私のせいで、気を遣わせては居ませんか。」

「……え。」

訃報を受ける前日。

イベントの帰りだからと家の近くに来たアサと会って遊び疲れて。

家に帰ってから倒れるようにして眠り、項垂れながら起きた次の日。

母が死んだと知らされた。

あの時またいつかと笑いあって別れた私達は、そうして今日再会をして。

私は気にも止めて無かったけれど、貴女はそこで負い目を感じてた

アサは優しくて不器用だから、こうやって言葉で伝えてあげないとずっと心で固まって苦しむんです。

今日会ってくれるのも勇気が要る事だったのに、貴女は。

そうやっていつも、優しさに苦しんでる。

それを肯定するように、アサは自分の右腕を強く抑えながら目を逸らしてポツリと呟く。

「……思ってたんだ。ずっと。

私があの時遊びに誘わなかったら…って。

だってそしたら。夜音の、お母さんは。」

「違います、アサ。

母が死んだのは、誰のせいでもありません。

あれが寿命で、責任なんて誰にも……」

「でも……!!

わた、私のせいで、夜音はお母さんの最期も見れなかった!!」

それでもアサは悪くない、咄嗟にそう返せば良かったのに。

__刺さる。

その言葉が胸に深く刺さって、息を飲みこむしかなくなる。

その言葉を否定してしまったら、母の死を悲しんだ自分が、無くなってしまうように思えたから。

躊躇した時間は僅かだったが、アサが判断するにはそれで充分だったようで。

「……ごめん。こんな話、今するべきじゃなかった。

今日はもう、帰るね。」

項垂れながら去っていく彼女の背中を、私は見ることすら出来なかった。

許されなかった。

夜音は、アサの影が視界から外れていくのを、ただ見ているしかなかった。

___


夕焼け火迸る空の真下、飛ぶ百足の上に跨るは、休日装い和装の草臥れた男。

「いやぁ、ホントごめんねクロ。休んでたのにさ。」

クロは、七の言葉に口の鋏をガチガチと鳴らして抵抗の意を示す。

やっぱ機嫌悪いなぁ……

生憎、これに報いるには三時間構ってあげなくてはいけない為少し気が滅入る。

「……あそこら辺か。クロ、頼んだ。」

その言葉の通りに、人目のつかない路地裏にゆったりと降りて、七はクロから降りる。

「お疲れさん。」

その言葉でクロは丸まって七の懐に入って休息を開始する。

……こりゃあ当分出てきてくれないな。

少し子供っぽい相棒を慈愛の目でみながら、目と鼻の先にある夜音の家へと向かう。

普通の住宅街。

周囲は所々に田畑、飲食店、商店があり、生活するにはここまで最適な所も無いであろう。

見知らぬ土地ではありながらも、僅かながらの郷愁が胸を梳く。

スマホで送られて来た住所に来てみれば、それはまぁ立派な屋敷で……

「__もし。私の家に何か御用ですか?」

突如降ったその気配に七は凍り付く。

比喩なく、その背後の人物の気配は声をかけられるまで微塵も無かった。

心臓が煩い、余りに久しぶりに驚いたものだから、悟られない為の表情が崩れている気がする。

警戒心を最大にして、振り向く事を決心する。

恐怖を、本能を振り払って……

「____は。」

老爺の顔を認識した瞬間、七の首が飛んだ。

血の流れる感触、生命の零れる音。

その全てを以て、絶命した。

___筈だった。

極限まで引き伸ばされた世界から戻って、七は自分の首元に手を当てる。

傷は無い、生きている。

その安堵で、目を閉じながら内にある鼓動を感じ取る。

「どうかされましたか?」

こちらが一方的に受けた精神的苦痛を一切考慮せず、目の前の男はこちらの顔を冷淡に見つめる。

「__ホント久しぶりに死んだと思った。お爺ちゃん、何者?」

「しがない年金暮らしの爺だ。

……さて、こちらの質問に答えて貰おうか小僧。」

「殺意だけで殺してきそうなの相手に?

無理だね。」

その言葉を聞いて男は眉を潜めたが、不快とは感じていなかったのであろう。

その口の端は上がっていた。

その笑顔に、後輩の面影を見て。

「これが親子って奴かね。」

そう呟いていた。

_______


「先程は失礼をした。」

正座しながら深々と頭を下げ、謝礼の意を示す彌圭は先程とは打って変わって理性的に見える。

……表面上は、だが。

「いやいや、事情を言わなかったこっちにも責任はあるし……」

苦笑いしながら返すが、それに夜音は茶を啜りながら冷ややかな目線で見つめる。

「良いんですよ七さん、そこで正座させておいて下さい。

……この顔はどうせまたやります。」

「うむ。多分またやる。」

表情を変えずに言い切るその行動自体はカロンやヘスに似た所があるが、こちらはどうも茶目っ気が過ぎる。

玄関前でのいざこざの途中で夜音が帰宅したのでそのまま誤解は解けたが、正直かなり危険である。

そういう所は実に夜音と似ているが……

「何ですか?」

「いいやなんでも。」

本人に言ったらキレるなんて事は分かりきっている。

性根は実に善良で優しいが、こういう人を怒らせた時が一番怖い事を七は熟知していた。

そう、いつも笑みを絶やさないあの店長のような……

「……やめよ。」

思い出すだけで喉元に刃物を突きつけられたような寒気を覚え、そこでトラウマの幻影を振り払う。

言わん方が良い事も、世の中には腐るほどある。

目の前に出された茶を啜りながら七は遠くを見てそう結論付けた。

「ではそろそろ、私は夕餉の支度をしなければならない故。失礼。」

彌圭は立ち上がると、ふっと台所へ消えていった。

居間には、テレビを見ている翠と夜音、そして七の三人が残る。

「ごめんね夜音ちゃん、着く時間言っておけば良かったよ。」

開幕早々謝罪から入る七に、夜音は毎回謝罪から入るなぁこの人と少し呆れる。

「だから良いですって。悪いのは父さんに連絡してなかった私なんですから。」

「いやいや、なんか流れで晩飯までご馳走になっちゃいそうだし、頭が上がらないのなんの。」

「いえいえ。晩御飯は元々食べる予定だった友達が帰ってしまったので人数は関係無いですよ。」

「あ?居ねぇと思ったらアサの奴今日は帰ったのか?」

「はい。ちょっと喧嘩……では無いですが言い合いになってしまって。」

「はぁ……お前らしょっちゅう喧嘩すんだから、巻き込まれるこっちの身にもなれよな。」

「どの口が言いますか、他人に喧嘩吹っかける貴女を宥める私達の身にもなって下さいよ。」

「ガキの頃の話持ち出すんじゃねぇよ。」

「つい数年前でしょう、遂に時間感覚まで分からなくなりましたか。」

「んだとコラ。」

ガミガミ言い合う二人を他所に、七は出されたお茶を飲みながらスルーを決め込む。

「……さて。ふざけるのもここまでとして。

七さん、時間も時間ですのでこのまま泊まっては?部屋も余ってますし。」

さっきは断ったが、正直ここの近くに宿屋があるとも思えない。ここは素直に頼むしかないか。

「……う〜ん、じゃあお言葉に甘えようかな。」

「決まりですね。これでス〇ブラが楽しめます。」

「その為だけに泊まり勧めたの?」

「それ以外に理由は要りません。」

はぁ。やっぱズレてるって言うかなんて言うか……

七の心労など知る由もなく、夜音は相変わらず呑気にはしゃいでいるのであった。

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つくもの @Rin_tyokki

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