行間からはっきりと垣間見える、「若さゆえのすれ違い」が生んだ過去
- ★★★ Excellent!!!
二人の間には一体何があったのか。
「武春くん」と主人公の「私」の関係性。かつて恋人だった彼の姿を見やり、胸が締め付けられる。
かつては本当に幸せだったのに、「些細なすれ違い」から自ら別れを切り出してしまったという。
一文一文が丁寧に紡がれていて、「過去に何があり、どうして彼女の方から別れを告げることになったのか」について自然と想像力が刺激されていきます。
嫉妬心が絡んでいること、些細なすれ違いだったこと。若さゆえのこと。
彼女は本当に武春くんのことが好きで好きで、彼のことで頭がいっぱいだったのではないか。だからこそ、「彼が自分と同じくらいに自分を好きでいてくれるか」と不安でいっぱいになってしまったのかもしれない。
そして別れ。それも本心なんかじゃなくて、「試すような気持ち」だったのではないか。
青春時代の恋愛につきものの、「好き過ぎて相手に多くを求めてしまう」という気持ち。そういう後悔と寂しさなんかが行間からしみじみと伝わってくるようでした。
短い文章の中で過不足なく、「二人の過去」をしっかり想起させてくれる筆致、ひたすらお見事としか言いようがありません。