鈴木さんちのシェアハウス
かずま
シェアハウス鈴木の鈴木さん
俺は今日からシェアハウスに入居する。
シェアハウス鈴木。山奥にひっそりと佇む、自然をテイストに造られた、木造建物。
山奥にあるシェアハウスだから、交通の便が悪そうだと思ったが調べてみると、駅からバスで10分ほどで着く。
オーナーの鈴木さんって人と広瀬さんって人が共同で運営しているらしい。
どちらも20代で若い世代だから、俺も気兼ねなく話せそうだ。
このシェアハウスを見つけたのは、あるネットの口コミだった。
「あそこのシェアハウスのオーナーがやばい!」
俺はそのコメントを見て興味をそそられ、詳しく調べた。
すると、意外とお値打ちな値段で住めることがわかった。
上京してお金に困っていた俺には手頃な値段で住めるだけでありがたい!
それに、シェアハウスで新たな出会いがあると思うと、ドキドキと胸が高鳴る!
まぁ、オーナーがやばいってのは気になるけど、行ってみればわかるだろう。
俺はバスに揺られること10分。
シェアハウス鈴木に到着する。
建物の玄関の扉を開こうとすると、中から声が聞こえてくる。
「きぇぇぇぇー。この害虫めが!!俺が貴様をこの世から消してくれるぅぅぅぅ!!!」
あ、なんか帰りたくなってきた。
俺が玄関を回れ右すると、勢いよく扉が開け放たれ、中から剣幕な男がでてくる。
「チェストぉぉぉぉぉーー!!!!」
「う、うわぁぁ」
俺は驚くと同時に、その頭のおかしい男から謎のスプレーを噴射される。
驚きのあまり、俺は地面に尻もちをつき、腰が抜けてしまう。
「あ、あれ、ゴキブリはどこにいった?
ん、君はだれ?」
男はさっきまでの鬼の形相が嘘のように消え、平静を取り戻していた。
俺はさっきの変なスプレーが目に入って、痛すぎて地面でゴロゴロと転がっている。
「な、なんだ、君は!?新種のゴキブリか?」
「そんなわけあるか!どうみても、入居者だろ!」
建物の奥から女性が出てきながら、男の頭をはたく。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
俺は目を洗ったあと、頭のおかしい男に応接間に案内された。
ソファに座ると、さっきの女性がお茶を出してくれた。
「さっきはすまん。俺も頭に血が昇っていた」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ」
「ほんと、オーナーはバカだよね。おもちゃのゴキブリにあんなに気が狂っちゃうもん」
話を聞く限り、この女性が男にいたずらしていたようだ。
女性が笑いながら、男の頭をポンポンする。
男はそれを手で嫌そうに払う。
「ほんとにすまん。ゴキブリスプレーが目に入ってしまったが、大丈夫だったか?」
「大丈夫です、大丈夫です。顔をあげてください。洗ったら大丈夫だったので」
「いやぁ、君も君で傑作だったなぁ。地面をゴロゴロ転がりながら痛がるなんて、漫画でしか見たことないよ、ぷぷっ」
男の頭を叩きながら、女性が笑っている。
とても顔を整っている女性があんなに子供みたいに笑っている姿は、なんとも可愛いものだ。
「お前も笑いすぎだ、広瀬!」
「ごめん、ごめん。君もごめんね。今日から入ってくる入居者だよね?私は広瀬、ここのオーナーだよ!で、こいつは鈴木で私の奴隷」
「奴隷じゃねぇ。俺もオーナーの鈴木だ。ここのシェアハウスは俺と広瀬で共同運営しているんだ。よろしくな!」
「よろしくお願いします、鈴木さん、広瀬さん。俺は近藤って言います」
俺がぺこりと頭を下げると、鈴木さんと広瀬さんはニコニコしてくれた。
第一印象最悪だったけど、いい人そうでよかった。
俺のシェアハウス人生が、いま始まったばかりなのだ!
「そういえば、俺以外にはどんな入居者さんがいるんですか?」
「うん、いない」
「えっ、いない?」
「うん、君だけ」
「俺だけ?」
「そう、君だけ。よし、近藤くん部屋に荷物を置いたら、今日の晩御飯を調達しに行くぞ!」
「え?」
鈴木さんがあまりにも普通に言うから、理解するまでに時間がかかった。
どうやら、俺しか入居者いないらしい。
「というより、さっきなんて言いました?」
「だから、晩御飯を調達しにいくぞ!今日は鳥肉が欲しいから、鳥を採りにいくか!」
「えっ、俺晩御飯はどっかで食べに行くのでいいですよ?」
「そうはいかないぞ!ここのシェアハウスのルールその18!」
鈴木さんがそう言うと、広瀬さんが応接間の本棚から紙を取り出して俺の前に広げる。
その紙には、
「ルール18、飯は山から調達するべし?」
「そうだ、自然と共に生きることがこのシェアハウスの掟だからな」
「ちなみにこのルール破るとどうなるんですか?」
「家賃を増やす」
「こりゃ、ひでぇ」
「このシェアハウスに入るときの契約書に書いてあったはずだぞ!」
そんなこと書いてあったか?
うーん。
あぁなんか思い出してきたわ。
オーナーの言うルールに従わない場合は、家賃を増額しますって書いてあった気がする。
「すいません、俺出てきます。縁がなかったということで....」
俺は逃げるように、シェアハウスを出て行った。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
「だから言ったじゃない、こんな変なルールを作るからみんな出て行っちゃうのよ」
「俺だってへんなルール作りたくなかったよ....でも、ルールを作らなきゃ.....」
「はぁーあ、これでまたふりだしね。いつになったら、私たちは解放されるのかしらね」
鈴木さんちのシェアハウス かずま @kazuma0309
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