第2話:幼なじみがツンすぎて、俺の恋が始まらない。

「おはよう、遼太!」


朝の教室に響く元気な声。それは、俺の幼なじみであり、人生で一番うるさい存在、七海(ななみ)のものだった。


「おはよう……七海、声デカい。耳が壊れるわ」


「アンタがいつまで経っても起きてこないからでしょ! 今日は寝坊しなかっただけでもマシなんだから、感謝してほしいくらいよね!」


机をバンバン叩きながら文句を言う七海は、昔からこうだ。うるさくて、勝手で、でもなんだかんだ世話を焼いてくれる。

俺――成瀬遼太(なるせ りょうた)は、そんな彼女に振り回されっぱなしの高校生活を送っている。


「はいはい。ありがとよ、ママ」


「だれがママよ!!」


周りのクラスメイトがクスクスと笑う。俺はため息をつきつつ、椅子に腰を下ろした。


と、チャイムが鳴る直前、教室のドアがガラリと開いた。


「……あ、先生?」


「おう、今日は転校生を紹介するぞー」


ざわめく教室。


そして、ドアの向こうから現れたのは、明らかに場違いなオーラをまとった美少女だった。


すらりとした黒髪、整った顔立ち、モデルみたいなスタイル。スカートの丈は校則ギリギリ、靴下はちょっとルーズ。

見るからに「都会の女」って感じだ。


「……黒瀬 澪(くろせ みお)です。よろしくお願いします」


その瞬間、教室中の男子の視線が一斉に彼女に集中した。俺も例に漏れず「うわ、すげぇな」と思っただけだった――最初は。


昼休み。俺は購買でパンを買いに行く途中、廊下の隅でスマホをいじる澪を見つけた。


「……なんだ、ぼっちか?」


つい声が出てしまった。もちろん、悪気はない。……ないと思う。


「……あ? は?」


「や、別に悪い意味じゃなくて……」


「悪い意味しかねーだろ、クソ野郎」


「すんませんでした」


睨まれた。ガチで怖かった。


だが次の瞬間、澪はふっと表情を緩めて、ぽつりと呟いた。


「……ま、事実だけどね」


「え?」


「東京から来たばっかで、友達なんかできるわけないっしょ。地方は初対面で馴れ馴れしくするの、嫌うし」


「あー……まあ、確かに」


そこで俺は、自分でもよく分からないまま口を開いていた。


「じゃ、俺が案内してやろうか? この学校」


「……は?」


「いや、なんか、困ってそうだったから」


澪はしばらく俺を見つめた後、ふっと笑った。


「へぇ。見た目は冴えないのに、意外と気が利くんだ」


「ありがとうは?」


「ない」


そっぽを向く澪。けれど、確かにその口元は笑っていた。


その日からだった。俺のまわりの空気が、少しずつ変わり始めたのは。


次の日の昼休み、俺は澪と一緒に購買に並んでいた。


「おい、成瀬」


「うおっ!? 七海かよ」


後ろから声をかけられ振り返ると、七海が鬼のような形相で俺を睨んでいた。


「……なに、転校生と仲良くなっちゃってんのよ」


「いや、別にそういうわけじゃ――」


「そういうわけだよ」


横から澪が口を挟む。まるで俺の言葉を遮るかのように。


「昨日、いろいろ案内してもらってさ。遼太くんって、意外と優しいんだよね」


「りょ、遼太くん!?」


七海の目がバチバチに光った。俺は思わず一歩後ずさった。


「べ、別に……アイツは昔から、誰にでもヘラヘラしてんのよ!」


「へぇ。じゃあ七海ちゃんは、成瀬のこと、どう思ってるの?」


「べっ、別にっ! ただの幼なじみだし! それ以上でもそれ以下でもないし!」


「ふーん?」


「な、なによその顔!?」


「あ、やっぱわかりやすいね、七海ちゃんって」


「なっ……!」


完全に遊ばれてる七海。俺はというと、二人の間でパンを片手にフリーズしていた。


これ、ヤバいやつでは?

三角関係フラグって、こうして立つんじゃないか??


放課後。俺は校門で澪に呼び止められた。


「なあ、成瀬」


「ん?」


「……今度、休みの日にさ。ちょっと一緒に出かけない?」


「……は?」


「いや、別に深い意味はないって。こっち来たばっかで行きたいとこもよくわかんないし。ガイドしてよ、地元民」


「そ、そういうことか……」


心臓がバクバクしてたのを、慌ててごまかす。


だが、そこへまたもや刺客が現れる。


「ダメに決まってるでしょ!」


「七海!?」


「な、なに、勝手に誘ってんのよ! 成瀬はその日、私と図書館に行く予定なの!」


「へー。そんな話、本人から聞いてないけど?」


「い、今決めたのよ!! ダメ? ダメって言うなら……ぶっ飛ばす!!」


「物理的脅迫!?」


俺はもう、完全に巻き込まれていた。

可愛い系の転校生と、ツンツン全開の幼なじみに。


そして気づいてしまった。


もしかして、俺、ちょっとモテてる……?


いや、違う。これはたぶん、修羅場というやつだ。


その夜。布団に入っても、俺の頭は混乱していた。


(どうすりゃいいんだ、これ……)


俺はただの一般男子高校生。

ラブコメの主人公みたいな立ち回りなんか、できるわけがない。


なのに、現実はラノベみたいに進んでいく。


澪の誘い。七海の牽制。次は一体、何が起こるんだ――?


答えは、明日、また教室で。


〜To be continued〜

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