エピローグ
### 最終話
大学を卒業して数年が経ち、社会人としてそれぞれの夢を追いかける日々が続いていた。拓海は一級建築士の資格を取り、小さな設計事務所で経験を積んでいた。楓はフリーランスの家具デザイナーとして活動し、いくつかのデザインコンペで賞を受賞するなど、その才能をいかんなく発揮していた。
そんなある日、二人は拓海の両親から、実家を大規模にリフォームしたいという相談を受けた。
「せっかくだから、拓海に設計をお願いしたいんだけど、どうかな?」
父の言葉に、拓海は驚きと喜びを感じた。それは、自分たちが初めて共同作業として夢見た、あの小さな模型の家を、現実のものにするチャンスだった。
拓海は喜んで引き受け、両親の要望を聞きながら、何度も何度も設計図を書き直した。そして、そこに新しい家族の生活を描き、自分たちのアイデアを盛り込んだ。
「ねえ、このリビングのテーブル、私がデザインしたオリジナルのものにしない?」
「いいね。じゃあ、この照明は、大学の課題で作ったあれを改良して……」
設計が進むにつれて、二人の会話はさらに弾んだ。拓海が描く空間に、楓がデザインした家具が配置されていく。それは、まるで二人の夢が、一つの家として具現化していく過程のようだった。
楓は、リフォーム中の家に、自分のデザインした家具が少しずつ搬入されていくのを見て、満面の笑みを浮かべた。
その頃、楓のお腹は少しずつ大きくなっていた。
二人の間に新しい命が宿ったことがわかってから、拓海は毎日、楓の体調を気遣い、優しく寄り添うようになった。工事現場で汗を流す拓海が、休憩中もスマートフォンで楓と話している姿は、もはや日常となっていた。
真新しい木の香りが漂う新しい家で、楓は、拓海が設計したリビングの窓から外を眺めていた。
拓海が、楓の背中を優しく撫でる。
「見て、楓。俺たちの家だよ。そして、俺たちの家族の新しい家」
楓は、拓海の言葉に、深く頷いた。
外では、二人の夢を乗せた新しい生活が、少しずつ形を成し始めている。
お腹の中の小さな命も、この家から始まる新しい未来を、静かに待っているようだった。
ハツコイ、ふたり暮らし。 舞夢宜人 @MyTime1969
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