優しさは、柴犬みたいなカタチをしている——のかもしれない
まだまだ、犬を飼う事に慣れていない我が家は時々おあげにとって不便なことがあるかもしれません。
おあげはもちろん、人の言葉は話せません。これまでにどんな暮らしをしてきたのかも、私たちが知ることはありません。
保護犬で、ビビリで、痩せっぽっちだったおあげは今や10kgをほんの少し超えた健康的な見た目になってきました。ミックス犬なので、柴と違う部分もあり、目はビー玉のようにまんまるです。ご近所さんには「美人さん」と言ってもらえることもあります。
歯が欠けているおあげは、基本ご飯をあまり噛まずに丸呑みしようとする時もあるので、吐いてしまう時もありました。ちょっとの様子の変化でも、犬を飼ったことのない私たち家族は心配して病院に連れて行き、獣医さんに「心配ないですよー」と笑われることもありました。
言葉は喋れなくても、こんなに表情豊かな生き物がいるんだな。あたたかいな。
……おあげと出会って、私もそう感じるようになりました。
おやつが大好きで、目をキラキラさせて待っていたり。逆に美味しそうな匂いがする時は膝に顎を乗せて一生懸命もらおうとしたり。
うっかりオナラをすると「……あたち何もしてないもん」のようにあからさまに顔を逸らしたり。
今では朝の起床時間に合わせて部屋の前でお出迎えしてくれたり、逆に遊んで欲しいのになかなか出てきてくれない時は、部屋の前にお気に入りのパンのおもちゃを置いてその奥でふて腐れて落ちていることも。
毎日辛いことがあっても、おあげの存在で少しだけ笑顔になってきた気がします。
家族だってそうです。妹も、おあげがいるという責任感からか、前のように怒りに任せて行動したり、何かを壊すようなこともとても減りました。それどころか、ちゃんと毎日の歯磨きトレーニングも、どれだけおあげが嫌がって反発しても、それに対してキレたりせずに欠かさずやってくれています。
そのおかげで、家族全体の会話も増えてきたように感じています。
一番小さな命、だけど我が家にとってかけがえのない存在。それがおあげです。
何も言わない、でも側にいる。
こちらが何も求めなくても、当たり前のように横でのんびりしてくれる。(撫でろの要求はすごいけど)
それは今まで「お願いします」「やってください」「できませんでした、あと頼みます!」「なんとかして間に合わせてください」を必死にやり通していた私にとって、とても安らげる関係でした。
保護犬だったおあげが我が家にやってきて、もう8ヶ月になります。
まだまだ私自身は、トラブルの後処理に日々追われながら仕事に行く日々を繰り返しているところです。
4歳になるまで、自分の精神が出来上がるまでの期間を、この子がどう過ごしてきたのかは知りません。時々「こんなにいい子なのに、何故飼い主さんは手放したんだろう」と思う時もあります。
おあげが我が家に来るときに「大学生くらいの子を施設から家族として迎えるようなものだよ。きっと何かしらあるよ」と私は話しました。自分自身、人間嫌いなので新しい環境や人にどうしても馴染めなかったり、できることなら会話もせず過ごしたいと思うことはよくありました。けれど、おあげは逆に私達に見返りなしのたくさんの愛情を向けてくれたのです。
これまで彼女が過ごしてきた日々がどんなものだったとしても、「ああ、このお家に来て幸せだったな」とおあげが思ってくれるような生活にしたい。
そう思えるような優しい気持ちは、おあげがくれたのだなと思っています。
犬を飼う初心者マーク家族、まだまだ一年目ですが頑張ります。
優しさは柴犬のようなカタチをしている すきま讚魚 @Schwalbe343
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