花街の華

　人類が電気を失った未来。花街として栄える島の最奥に、新良貴（しらき）座という劇団の持ち劇場があった。その劇場は今も発電機が稼働していて、電気を使うことのできる数少ない場所だった。経験したことのない光を求めて、本土から毎夜観劇客が殺到していた。
　新良貴座の座長は世襲制のため、その妻の座や座内の序列を巡って、座員たちの思惑が渦巻きあっていた。看板女優として活躍する真白は、元は劇場前に放置されていた捨て子だった。一度耳にした言葉や音をその場で記憶できるという特技を持っており、それを見抜いた先代の看板女優が、自らの後継にするために養女として引き取ったのだ。義母となった彼女は、真白に厳しい修行を積ませた。自らがなれなかった『座長の最愛の妻』の座を、娘に手に入れさせたかったのだ。結果、新座長は別の女…続きを読む