閉、まだ楽園。
「あれ。パズルはどうしたの」
いつものようにアヅキの後から保健室に入ってきたツキトジ先生は、歩きながらくるりと一回転して床のパズル用ブースを探した。
アヅキは手元に集中しながら、挨拶は省略して返事をする。
「完成したから、片付けちゃった」
「え、崩しちゃったってこと? ああいうのって完成したら額とかに入れて飾ったりするもんだと思ってたけど。なんだあ」
先生は少し残念そうに言う。完成品、見せてあげたら良かっただろうか。……どうせ全部白だとか興味もなさそうに言うのだろう。
「だってまたやるかもだし。ここに置いておいていい?」
「馬鹿たれぶう、嵩張るからもう家でやって」
「おはようございます」
話している間に戸が再び開いて、堂々と朝の登場を見せたのはダイナだった。
「あっやっぱりここにいた。おいものぐさ! 昨日話したのはなんだったんだよ! 今日という今日は教室来い!」
ダイナはアヅキを見るなりテーブル越しに詰め寄った。しかしアヅキはどこ吹く風で片手間にあしらう。
「天使様、今日も今日とてわたしはどん底です。お許しください」
「天使じゃなくて俺が許さん。来い!」
「ヤダ〜! ツキトジセンセ〜!」
「いってらっしゃ〜い」
ずるずると引っ張られるアヅキを、先生はまったくいつも通りに見送るのだった。
保健室の雛 端庫菜わか @hakona
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます