第7話 アイ・アム・レジェンド

「ふんふんふんっ……」


 私は忙しく首を左右へ振り、その振動を大統領の肛門から全身へ伝える。

 彼の健康的な尻に、ほっぺたが当たり「ペチペチ」と愛くるしい音を立てる。


 振っているうちに私の顔は高速で左右へ揺れる。

 同時に大統領の尻は愛くるし音から「バチンバチン!」とムチで激しくひっぱたく音に変わった。


「い、痛い! 痛い! イタぃい!?」


 次第に彼の尻は赤いピーチのように変色した。


「ふんふんふんふんふんふんふんふんふん、ふんーーーーんぅ!!!」


「ぬぅぅぉぉおおおわあぁーーーー!!?」


 私の高速の首振りにより反動で、バランスを崩した大統領は、叫び声と共にデスクの下へと沈む。


 パリン!


 その寸分の差で書斎の窓に穴が空き、穴から稲妻のようなひび割れが発せられる。


 なんという貫通力。

 防弾ガラスで作られた職務室の窓を容易く貫いてきた。

 やはり最新型の狙撃ドローンなのか?


 いいや、今はそんなことより――――。


 彼と共に床へた倒れ込んだ私は、その安否を確認した。


「ご無事ですか? 大統領!」


「あ、あぁ……右耳をかすっただけだ」


 職務室の外で警護官が駆けつける足音をが床を伝って響く。

 大統領はデスクの下へ伏せたまま私へ話しかける、


「君のお陰で大統領の任期は続けられそうだ。ありがとう」


「いえ、これが私の仕事ですから」


 それだけ返すと私は息を大きく吸い込み、首を引っ込める。

 見事、すっぽりと大統領の肛門へ頭が隠れた。


 さすがに大統領の尻の穴から顔を出していると、別の意味で大事おおごとになる。


 ふふふ、明日の朝刊の見出しは『大統領を救った補佐官、アイ・アム・レジェンド(我は伝説なり)』かな?


 スーツ姿の警護官が数名、勢いよく職務室のドアを開けると、彼らは驚く。


 ズボンを脱ぎ赤々とした生尻をさらけ出す大統領が床に伏せていた。


 警護官らはホワイトハウスの銃撃に驚いたのか、はたまた、尻丸出しで床に伏せる大統領の姿に驚いたのかは解らないが、素早く大統領の周辺を円形に囲み守備を固めた。


 警護官の一人が聞いた。


「大統領! 一体何を――――何があったのですか!?」


「そ、狙撃だ! ホワイトハウスが狙撃された」


 あえて事情を聞かない警護官の気遣いに感謝する。


 これでいい。

 これでいいんだ。


 私は大統領の側から片時も離れることなく、お守りすることができる。




 ――――――――――――常に忠誠を。



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 おわり。

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ホワイトハウスの穴 ダークサイド・オブ・ザ・ムーン にのい・しち @ninoi7

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