第6話 ホワイトハウス狂想曲

 尻だけにケツ意を固めた矢先、大統領の怒号が書斎に響く。


「な、何をしている!? 君は私の肛門を引き裂くつもりかぁ!?」


「い、いいいいい、いえっ!!? 滅相もありません! 大統領の肛門を引き裂こうなど、国家反逆罪もはだはだしい!」


 あ、危なかった。

 私は一体、何を企んでいたのだ?

 独占欲と願望に負けた私は、あろうことか敬愛する大統領の肛門を真っ二つにしようとしていた。


 いや、尻もともと真っ二つなのだが……。


 大統領は自分の尻から聞こえる声に恐怖を覚え、その場でダンスするように足を動かしてクルクルと回り、背後を確かめようと努める。


 彼が忙しく回るものだから私は酔ってしまい気分が悪くなって来た……。


「だ、大統領……そんなに早く回ると、う、うぷっ」


 胃がひっくりかえる辛さに耐えていると、書斎の窓に一点の星が見えた。

 私にはその輝きがなんなのか検討がつく。


 海軍で戦場に派兵されてから、幾度となくみた光。


 狙撃用ライフルのスコープが光に反射して起きる照り返しだ。


 だが、ありえない。

 ホワイトハウスの周辺には高い建物はない。

 狙撃に最適なポジションなんてあるはずがないのに、スコープの光がこちらを睨み付けている。

 狙撃機能を備えた航空ドローンか?

 それこそ建物周辺は数えきれないほどの監視カメラと、24時間体制で警備員達が眼を光らせている。

 最新型のステルス・ドローン?


 いや、そんなことを考えている暇などない。

 この緊急事態を大統領に知らせ、危機を回避せねば。


「危ない!?」


 しかし、護衛対象となる彼の思考は混乱を極め、日頃から示唆されていた狙撃への警戒を忘れていた。


 とはいえ、今の私は大統領の強固な尻に身体がのめり込み手も足も出ない。


 こうなれば――――。

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