現代美食家グールー
クラン「目マスク覚醒中!」
畑中ことね
世界には、時より化け物が生まれる。
人間でありながら人を食う化け物。
そんな化け物が都市社会に紛れ潜んでいると噂されていた。
世の中でその化け物はグールと呼ばれている。
グールは人間を食べないといけない身体的制約を持っている訳ではない。
人間以外の物を食べても消化され栄養を摂取することができる。
人間を食べる必要が無い。ただ、抗えない程の食人欲が溢れでてくる。
「君何回目?こんな簡単なミス」
「すみません、次からは気を付けます。」
「何回聞いたかな、その言葉」
「すみません」
「まあいいよ ――次は―― 気を付けてね」
私は、畑中ことねです。上京してOLをしています。
毎日上司ねちねちとした小言を聞き、家に帰って寝るだけの生活。
あ、泣いてしまいそう。
「大丈夫?修正手伝うよ」
微笑み話しかけてくれるのは、同期の湊くん。
「ありがとう」
やさしい、この生活で唯一と言っていい癒し。
気を使えて、仕事もできて、かっこいい、何ていい同僚なんだろう。
こんな人が彼氏だったらこんな毎日でも、楽しく暮らせるだろうな。
さて、上司も帰ったし今日はそろそろ帰るか。
「お疲れ様です。畑中さん」
デスクで帰り準備をしていると背後から話しかけられた。湊くんだ。
湊くんに話しかけられるのは嬉しいだが、この状況少し妙だな。
お疲れ様の挨拶、程度はするが作業をしつつの流れでする程度。
わざわざ、自分の席を立って挨拶をしに来ることはない。
「あ、お疲れ様です」
どうしたのだろうか。
「畑中さん今度ご飯でもどうですか?」
「え、」
予想外の言葉に――え――がピークしてしまった。
次、発する言葉は慎重に決めないといけない。
だが、迷うことはない。答えは既に決まっているのだから。
「是非!」
湊くんからお食事のお誘い!これは、断る可能性一切なし!
ああ、気分がいい!
最近の私は無敵状態!上司の小言を言われてもなんともない。
高笑いしたいくらいだ、ガハハ。
ご飯は今度の休みに行くこと、となった。
お食事当日!駅で待ち合わせしてお店に向かいます。
待ちに待った、湊くんとのお食事!これは事実上のデートですね、はい!
おしゃれなお店、流石湊くんセンスがいい。料理もおいしい。
湊くんがリードしてくれるおかげで楽しく会話もできてる。
私も何か話題を振らないと!
「趣味なんてあったりしますか?」
「趣味か、僕は山が好きなくらいかな」
意外だ海っぽい名前してるのに、山派。
「いいですね、私も海か山どっちが好きか聞かれたら山って答えるくらい好きです」
「なら今度一緒に登山なんてどうですか?」
湊くんからのお誘い、これ!(以下同文)
楽しい時間を過ごし、「今日はありがとう」と言って駅で解散しました。
ふぅ、今日は楽しかったぁ。
そして、お誘いに次ぐお誘い。
いやこれ、私に気があるな。
登山に誘われたわけですが、内心不安になってきました。
登山というのは、とてもハードルの高い言葉なんですよね。
普段デスクワークしかしてない体力のない私に登山。
しかし、杞憂でした。どうやらハイキング程度らしいです。
ハイキング程度とはいえ準備しなくてはいけません。
相応しい服装というのがあります。
普段しないことの相応しい服装というのはわからないものです。
ハイキングの服とネットで検索してみたところ。
カジュアルでそこら辺を散歩するかのような軽めの服だったり、ガッツリ登山するんじゃないのこれと思うガチ装備だったり、と幅広いんですよね。
この服装の塩梅大切、ガチ装備過ぎると、「うわぁそんなつもりなかったのに、気合入ってるなぁ、」と思われ。
軽すぎると、「こんな服装で?畑中さんってこんなに考えなしだったんだ、こりゃ仕事できないわw」と思われてしまう可能性がある!
はぁ、なに考えてるんだろう。
はい、登山ことハイキング当日になりました。
空を見ると、満点の雲空。
天気予報では晴れだったのにこの天気。
まあ雨は降らないらしいのでまだよかったと思いましょう。
交通手段としては、湊くんが車を出してくれます。
「おはようございます、畑中さん」
「おはようございます、私今日を楽しみにしてたんです」
「たしかに、畑中さん気合入ってるね!」
「……」
車に乗って山へ向かいます。
山道に入ってきました民家がちらほら建ってる。
ハイキングできる山には見えないけど大丈夫かな。
しばらく乗っていたら、道端に車を停めました。
「じゃあ降りて」
「こんなところでハイキング?」
「穴場なんだ」
付いてきて、という湊くんのすぐ後ろを歩きます。
整備されてなく、道とは呼べないような獣道を進んで行くと。
一軒家?小屋?が出てきました。
突然湊くんが立ち止まり振り返り。私の両肩に手を置きました。
「畑中さんいや、ことねさん!」
「貴女のことずっと、おいしそうだなって思ってたんです」
「え、」
肩にあった手を首にかけ、絞められる。
叫ぼうとするが出ない、視界が揺れ、次第に意識を失った。
「あなたみたいな人って狙い目なんですよ畑中さん、上京したて、周りに頼れる人もいない、だから悪い男に食べられちゃう」
グールというのは老若男女、見境無しに襲って喰らうと思われてるが、僕に限っては違う。僕は美食家を自負している、よってより美味しい物を食べる。
老いて熟れきり腐った物より、みずみずしく若い物の方が美味しいのは当たり前。
そして男なんていうのは、筋肉質でダイエット食のようなもの。
そんなものでは、美食家たる僕を満足させることはできない。
女性の方が美味しい、常識的に考えて女性の方が美味しいに決まってる!
そして、友達の居なそうな上京したての一人暮らしの女の子なんてのは、僕の大好物だ。
恍惚な笑みを浮かべ、空になった食器の前で手を合わせた。
「あぁ、おいしかった。本当にありがとうございました、畑中さん。」
これで、仕事のできるサラリーマン湊、としての顔は使えない。
またゼロからやり直しますか。
次はどうしようかな?学生とかもいいかな?。
「さて、次はどんな子にしようかな」
――――――――――――――――――――――――
あとがき。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回、一話完結のベリーショートを書こうと思っていたんですが。
思いのほか妄想が膨らんでしまい、もう数話ほど書こうと思っています。
完結までお付き合いお願いします!
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現代美食家グールー クラン「目マスク覚醒中!」 @tocchi123
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