「ちゅん」から始まる「キュン」とさせる恋物語

 朝霧伯爵家の長女の涼音。
 しかし華族のお嬢様にも関わらず、彼女の生活は『華やか』からかけ離れていた。

 旅先の異国で父が亡くなり、婚約者が行方知れずになり、残った家族は後妻として迎えられた義理の母と連れ子の妹だけ。

 父と婚約者という後ろ盾がなくなった彼女は下女の立場にまで落とされ、『すずめ』と馬鹿にされながら、休む間もなく働かされる毎日。

 彼女にも味方はいた。
 涼音をお嬢様と呼び慕う、下働きのすず。唯一の心の支えになっていた彼女にも不幸は降り注ぐ。
 ある日、誤って壺を割ってしまい、その責任として、すずに身売りをしろと義母たちが言い出す。
 すずを慌てて庇うが、今度は涼音が遊郭へ売り飛ばされそうになる。

 その時、婚約者の従弟を名乗る男性が現れて……




 絶望から始まる、大正ロマン風物語。
 当時の情景もそうですが、涼音の服や立場が丁寧に表現されているからこそ、彼女の地獄が鮮明に伝わってきました。
 ただ甘いだけじゃなくて、予測不能な展開や、主人公の成長が感じられて。
 ドキドキする展開の連続で、ページを捲る手が止まりませんでした!


 大正ロマン×シンデレラストーリー×契約結婚×ファンタジー。
 これだけの要素を余すことなく詰め込んだ素敵な物語。

 最上級の「キュン」を是非ご覧ください!

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