秋の風に、草花の揺れるが如く。

秋の風を感じる頃の可憐な草花の掌編集。
各方面より大人気の作者の、情感溢れる
秋草の成華は可憐で優しい香を振り撒いて
人の心の奥底へと残る。

 女郎花と男郎花の花が夕闇に溶ける。
蛍の様な幽かな魂の輪廻転生に思いを馳せ
 其処に草花の根の在る限り、何度でも
繰り返す運命を嘆く。『儚い恋』『慎重』
花言葉の如く。

 重陽に菊華の査定を請ける。無病息災と
繁栄を願う菊神が宿り、その年の新人を
見極める。気に入られれば良いが、もし
気に入られなければ…。陽の気も重なれば
陰へと振れる。

 庭の柊の木に見守られていた少年は
見えてしまう 事で災厄につけ込まれては
柊に宿る老爺に助けられるが。
 柊の所以は、明くる年の追儺をも
想わせる。温かな想いが胸を熱くする。


 どの花も、美しく 凛 と咲き誇る。

作家、遠部右喬渾身の、美しく匂い立つ
 嫋やかな

        怪異譚。



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