願いは叶ったのだろうか。

これをホラーと思って読んでいたが、
ラストの昇華で現代ファンタジーである
得心がいった。
 日々の仕事に心身共に疲れ果てていた
孤独な男が、ある休日に神社を訪う。
賽銭箱に小銭を入れて、

  と或る 願い を口にする。

何の変哲もない、至極ありふれた彼の
望みは、自らの有り様が変われるように。

大学院まで学び、研究者として大手紡績
メーカーに籍を置く彼は、しかし上司に
体よく使われる雑用係としての日々。
 そんな不毛な日々の気まぐれが彼に
齎したものは、小さな幼虫。
青虫とは言うものの、驚く程に青い虫を
見た事はない。寧ろ、専門である彼の
好奇心を釘付けにしたのは間違いない。

 二匹の幼虫の変態は更に驚くべき姿を
見せつつも、その正体は皆目わからない。


息を呑んで読み進めて行く。いや、目が
離せなかった。背中をゾワゾワとした
悪寒が常に張り付いては、活字へと
移行する。
 この感覚を是非とも味わって欲しい。

彼の願いは叶ったのか。
             それとも

  あの幼虫たちは何だったのか。
 そして、彼は ────。


ラストの昇華で、これがSF的な現代の
幻想譚だと知れる。