第10章 そして海にも山にも春が来る

第34話 次の年の春(完)

 次の年の春のことだ。


 海から山に、花嫁がやって来た。


 長く伸びた髪をまとめて翡翠のついた髪飾りをさし、色とりどりの布に白い渦の刺繍が入った衣装を着て貝殻の首飾りをつけたノジカが、船に乗せられ、大勢の男女に見送られて山に戻ってきた。


 山も海へと、花婿を送り出した。


 髪をきつくひとつに縛って油で撫でつけ、炎の波に似た黒と赤の紋様の波模様を染め抜いている絹の衣装を着て鉄の大太刀をはき、紅玉の首飾りをつけたオグマを、山の民みんなで見守って船に送り届けた。


 オグマとノジカが手を叩いた。


「交代だ」



 春が、来た。

 とこしえの、春が来た。





<終わり>

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イヤサカ 日崎アユム(丹羽夏子) @shahexorshid

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